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夢の世界の真実
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ずっと会いたかった。
何度も心が痛くなって。何度も一人で泣いて。
自分はこんなにも弱い人間なのかと何回も思いつけられた。
あの人がいなくなってから、何をするにも楽しくなくなってしまって。
記憶でさえも、だんだんと薄れていくようになった。
葬式の日はどれだけ感情が黒くなってしまったことか。
あの人に泣き顔は見られたくないから。だからずっと笑顔で見送っていた。あの人も望んでいたことだというのに。
皆は、俺を酷い目で見た。
おかしいのではないかと。帰るときもずっと言い続けていたことだ。
今になってみれば、確かにそうかもしれないなって。自分自身で納得のいく理由で、その思い出を心の底へ沈めた。
・
あの人が大好きだと言ってくれた笑顔を。今、俺は出来ているのだろうか。
こんな俺を見たらあの人はきっと悲しむんじゃないか。
そんな思いが俺の心の中でぐるぐると動き回る。
──でも、正直そんなことどうでもよかった。
ずっと会いたかった人に『夢』の世界という素晴らしい場所で今この瞬間会えたのだから。
目尻が、心臓が蕩けてしまいそうだ。
重く閉ざされた口を、小さく開ける。
声を出そうと必死に喉へ力を込めて、ほのかに掠れているその声で。
大粒の涙を流しながら言葉を紡いだ。
優人
「……ずっと…会いたかった………"お母さん"……」
もっと言いたかったはずなのに、言葉が出てこない。涙だけがずっと溢れだして止まらない。
「ほら~泣かないの!ゆうちゃんには笑顔が一番似合ってるんだから。」
涙を拭ってくれる手は、白くて、細くて。でも力強くて。
ずっと触れてほしかった母の手に、時間が止まればいいのにとおかしなことを思ってしまった。
優人
「…守れなくて…ごめんね…」
何言ってんのさと、そう微笑みながら俺を抱き寄せてくれた。花の甘い香りが優人の鼻をくすぐる。
ぐっと抱き寄せた体を引いて、今度は俺のおでこに自分のおでこを合わせてきた。
「大好きよ。ゆうちゃん」
笑顔で告げた母の言葉に、優人は綺麗な笑顔で少し照れくさそうに返事を返した。
優人
「…俺も」
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