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ポッキーゲーム ―南悠太の場合―
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今日は11月11日。
世間はポッキーの日で盛り上がりを見せてる。
かくいうオレ、南悠太もそのひとりだったりする。
オレはコンビニで買ったポッキーを持参して、八雲さんちに来ていた。
「ねえ八雲さん」
「なに?」
「オレもしてみたい、です。ポッキーゲーム…」
ポッキーゲームしてみたいって、キスしたいって意味に置き換えられることに途中で気づいた。
言ってて恥ずかしくなったから、語尾がすごく小さくて弱い。
八雲さんは子どもっぽいと言って笑うのかな…。
チラって見てみると、少し驚いたように目を丸くしていたけど、すぐにクツクツと笑った。
「いつも恥ずかしいことしてるのに、相変わらず照れ屋で可愛いな」
「それ喜んでいいの…」
「いいよ。すごい誉めてる」
笑いで出た涙を拭う八雲さんを見て、なんかやっぱりバカにされてるような気がして少しむくれる。
それに気づいた八雲さんが、そういうところも可愛いよって言いながらオレの隣に座ってきた。
そして右の手のひらを上にして、オレの方に差し出してくる。
八雲さんの意図がわからなくて首を傾げたら、八雲さんの顔がきょとんとした。
「ポッキー持ってきてるんだろ?やろうよ」
「えっ、いいんですか」
「可愛い南のお願いだからな」
大きな手でオレの頭を包み込むように撫でてくれる。
それが心地よくてつい甘えたくなるけど、今は先にポッキーだ。
バッグからポッキーの箱を取り出したら、八雲さんが手を差し出してきたので手渡す。
箱と袋を開封して、ポッキーを1本取り出した。
「南、あーん」
当然のようにポッキーを差し出してきて、急に恥ずかしくなってきた。
「オレから!?」
「後でもいいけど…」
そう言ってチョコの付いてない方を咥えて、八雲さん目を瞑る。
うわ、うわ、ダメだ、八雲さんなんかえろくて顔近づけられない…。
「あの、オレから咥えます…」
「そう?」
八雲さんはけろっとして、改めてオレの方にポッキーを差し出す。
八雲さんと…ポッキーゲーム…。
頭のなかで意味わからないぐらいシミュレーションをしたら、なんかどれも恥ずかしくて考えるのをやめた。
今のオレ、絶対顔赤い。
意を決して目を閉じて、口を小さくて開く。
「いい子」
八雲さんはそう言ったあと、オレの口の中にポッキーをゆっくり入れてきた。
それを唇で挟んで、これから起こるであろうドキドキゲームに心臓がバクバクし始めた。
まだかまだかって八雲さんもポッキーを咥えるのを待ってたら、ポキッと折れる音がした。
「え?」
口の中には折れた欠片のポッキーだけが残されて。
不思議に思って目を開けた瞬間、目の前には八雲さんの整った顔があった。
何事かわからないまま八雲さんに唇を舐められて、残りのポッキーをサクサク食べる八雲さんを見つめる。
「ご馳走さま。南のポッキーおいしかったよ」
そして、そこでやっと八雲さんにキスされたんだと気がついた。
「やっ!あ!の!」
「南の反応が可愛いからつい」
「や、あの、いえ、大丈夫です…」
不意打ちキスとはまさにこのことだ…。
しかもイケメンにしか許されない技だ…。
隣で余裕な笑みを浮かべる八雲さんが、どうしようもなくかっこよく見えて。
一瞬で終わってしまったキスが物足りなく感じて、ねだるように身体をくっつけたら優しく床に押し倒された。
愛しそうに頬を撫でられたあと、ゆっくり顔が近づいてきたから目を瞑る。
八雲さんの深くて熱のこもったキスは、甘いチョコの味がした。
▽
11月11日:ポッキーの日
南がポッキーゲームに興味があったら
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