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イケメン教師、電車は苦手だと校長に告げる
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懇親会をここで断るのは難しそうだ。校長のメンツをつぶすことになる。仕方がない、参加ということにしておいて、乾杯だけして、いざとなったら体調を理由に引き上げればいい、と小坂は考えた。
だが、小坂には、酒席のほかに、もう一つ苦手なものがあった。「酒席はセクハラされるから参加したくない」と言い難いように、こちらを苦手とする理由もまた、はなはだ言いにくかった。言いづらいが、ここは言わねばならぬ。小坂は意を決して小声でおずおずと言いかけた。
「実は私、電車は……苦手で……」
すると校長は、小坂の表情を見てとったのか、小坂がしまいまで言い切らぬうちに、すぐさま返してきた。
「痴漢にあうからか?」
図星だった。校長の、あたりをはばからぬ腹から出す大声と「痴漢」の言葉に、小坂の顔は熱くなった。仕事をしていた教員たちも、それぞれに手を止め顔を上げ、振り向いて、小坂の方をいっせいに注目した。
「小坂君のような美男子は、女性専用車両に女性が避難して、逆に、ますます危なくなったな」
校長は、あっはっはと腹の底から笑った。校長のセクハラ発言を、周囲の男性教諭たちもとがめずに、いっしょになって、にやにやして聞いている。
「ちがいます……単に電車に乗り慣れていないだけで……」
恥ずかしくなり誤魔化そうと、しどろもどろになる小坂の背中を、
「だったら心配ない」
と校長は、勇気づけるようにポンと叩いた。
「私が、しっかりエスコートしてやるから」
校長に耳もとで優しくささやかれ、小坂は、断ることができなくなった。
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