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暫くの沈黙を破ったのは父の重たい溜め息だった。
「母さんから聞いてるかもしれないが、今会社はかなり窮地に立たされてる。」
ゆっくり、話し辛そうに父が言葉を発する。
それを俺は黙って聞いていた。
「大きな会社と取り引きを始めたって話したよな?その会社の会長が提案してくれたんだ。」
それはかなり時代錯誤な話だった。
会社を助ける代わりに子供を自分の孫と引き合わせたい。
あわよくばその孫と結婚させたいとの事だった。
「で、何で俺なの?」
そう聞くと、父も理由が分からないのか首を振る。
「私もそこは聞かされて無い。ただ、会長が偉くお前を気に入ってるみたいで。どうしても深月が良いと言われた。」
父の言葉に俺は回らない頭をフル回転させた。
会長が俺を気に入る?
ぶっちゃけ、父の会社がどことどんな取り引きがあるか俺は知らない。
多分、いや絶対その会長って人と会ったことも無ければすれ違ったとさえ思えない。
だから何でそうなったかがかなりの疑問だった。
「だから・・・」
「だから?」
「だからお前は明日からその婚約者の家へ行け。」
もうこれ以上話す事は無いと言わんばかりに言い放つと、父は目の前のソファーから立ち上がってリビングから姿を消す。
残された俺は放心状態のままその背中を見送った。
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