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「深月、素直な気持ちを聞かせてくれ。」
琉聖の少し低い声が優しく呟いた。
でも直ぐには答える事が出来なくて俺は俯いた。
少しの沈黙。
広いリビングの張り詰めた空気が少し息苦しい。
何も言わず俯く俺の言葉を待ってくれているのか、琉聖は黙って俺を見詰めていた。
「何から話したら良いか分からないけど・・・」
「何でもいい。自分の話せる事から話せばいい。」
最初の印象とあまりに違う琉聖の言葉に鼻の奥がピリピリする。
取り留めが無いとは思うけどとりあえず話そうと俺は口を開いた。
「突然、婚約しろって言われてびっくりした。父さんの会社の内情とか・・・聞かされて。でも俺はどうする事も出来なくて・・・そしたら朝には迎えが来て、転校して・・・」
あの日の事を思い出して胸が締め付けられる。
嫌とは言えない状況に子供の俺はどうする事も出来なくて、親に見捨てられた気持ちにさえなった。
「婚約者に初めて会わされて・・・そしたらこんなんで・・・」
優しくして貰えるなんて思って無かったけど、流石にあの一言はあまりにも無神経過ぎて落ち込んだ。
「謝ってくれたと思ったら・・・栗山さんに言われてて・・・」
言いながら情けなくなって堪えていたものが溢れ出す。
俺は至って普通の男子高校生で、乙女でもオネェでも無い。
泣いたのなんて多分幼稚園とかが最後な気がするくらいなのに、ここ数日で泣いてばかり居る自分に腹が立つ。
人って環境が変わると人格まで変わってしまうのだろうか?
止めどなく溢れる涙をどうする事も出来ないまま俺は手の甲で頬を拭い続けた。
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