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一息吐いて車に乗り込むと琉聖の待つマンションに帰る。
暗くなった街並みは初めてここを通った時とは違い、少しだけ秋の気配を感じた取れた。
少し走って見慣れたマンションの前に車が静かに停る。
ドアが開かれ足を踏み出すとエントランスに見慣れた姿があった。
「・・・琉聖?」
声を掛けるとゆっくりと振り返った。
「おかえり、深月。」
フワッと微笑まれた瞬間、何とも言えない気持ちが胸に湧き上がる。
「どうしたの?」
足早に近寄ると、琉聖も少しだけ俺の方に歩み寄った。
「そろそろ帰ってくる頃だと思って。今日は少し遅かったな?」
そっと腕に触れながら言われた言葉がスッと疲れた身体に染みる。
どうしたの?って聞いたら不機嫌になるかな?
最近の琉聖の優しさに戸惑う。
最初の印象がかなり悪かったから余計今の対応にどうしていいか分からない。
「早く中に入ろう。」
触れられた腕を掴んで琉聖に促された。
いつもは部屋で読書か仕事をしている琉聖が今日に限って外の、エントランスにまで降りて俺を待っててくれた。
それが疑問でもあったが素直に嬉しくもあった。
「琉聖、待っててくれたの?」
「遅かったから・・・」
目は階数を示す数字を見つめながら琉聖が短く答える。
遅かったと、言ってもせいぜい10分くらいなんだけど。
「テーブルマナーがなかなか上手く覚えられなくて。また先生に怒られちゃった。」
苦笑いしながら言うと、琉聖が少し困った顔で俺を見た。
「大丈夫か?」
少し不安気な声に驚く。
心配してる・・・のかな?
「あっ、大丈夫だよ。直ぐに覚えられるようにするから。」
慌てて言うと琉聖が緩く首を振った。
「マナーの心配をしてるんじゃない。深月の心配をしてるんだ。」
俺の心配?
あまりの予想外の言葉に琉聖をまじまじと見つめる。
マナーを覚えられなくて大丈夫か?コイツって心配したんじゃなくて、俺自身を心配してくれてるの?
その思考が俺には理解出来なかった。
何も望まないと言った琉聖。
それは『婚約者』として恥をかかせないでくれって事じゃ無かったのかな?
だったら俺自身の心配はどうでも良いんじゃないのかな?
また疑問で頭がいっぱいになる。
本当に琉聖の事は分からない事だらけだ。
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