アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
日常を為すべきだと、刹那
-
「初めて春乃君、君と出会った時に言ってたよね…『辛くて辛くて何も考えられない暗闇にいるんです』って。だから私は心配なんだ、君のことが。
少しずつじゃなくて一気に友人のことを忘れてしまおうとしているように見えてならない…今の君は」
…やめてくれ。
頼むからこれ以上心を掻き乱さないでくれ…。
「…っ…」
何も返答をしない俺を見て、理事長はどう思ったんだろうか。
苦しんでいると思った?それとも悲しんでいると思った?
「ごめんね、少し言い過ぎちゃったかな。
私も君の父親に君のことを頼まれているし、無理はさせたくないんだよ…春乃君には春乃君らしくいてほしいし、何にも嘘はついて欲しくない」
「…俺は何の嘘もついていませんよ。何も苦しくないし、無理もしてません。秋のことは思い出の一部だと思ってますから、もう大丈夫です」
せっかく救おうとしてくれているのに、俺はその手を振り払う。この手を掴めば後戻りできない程嘘に浸かることはなくなるのに、自ら自分を苦しめる方向へ歩みを進める。
「そっか」
少しの沈黙の後、理事長はポツリと呟いた。
「本当に、大丈夫なんだね」と念押しするように彼は言葉を続ける。
「…はい、大丈夫です」
俺は、ちゃんと笑えているだろうか。
この人の瞳に信じ込ませることができているだろうか。
大丈夫、大丈夫。
俺は笑ってるじゃないか。
笑えているじゃないか。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 174