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日常を為すべきだと、刹那
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「いらっしゃいませ」
言いなれた言葉。
俺は週に2、3回カフェでバイトしている。本来はバイトをすることは禁止なのだが、さっき理事長が言っていたようにバイトを公認されている。というか、理事長がオーナーを紹介してくれたからここで働くことができている。
バイトに何か特別な理由がある訳ではないのだけれど、何かをしていないとあのことばかりがグルグルと頭を回って、終わることを知らないから。
「ハル君、今日もかっこいいねー」
オーナーの石田さんはとてもいい人だ。本当は高校生の俺のことを雇いたくないはずなのに、雇ってくれた。高校生不可の、この店に。
「それ言うの何回目ですか」
バイトをする時の俺は、チャラ男の格好はしていない。
ストレートアイロンをかけていないので髪も癖毛のままだし、カラコンもしていない。
我ながら、学校にいるときの自分とは全くの別人だと思う。
だから、学園の人間にこの俺のことを知られることはないと過信していたのだ、完全に。
「ハル君がかっこよすぎてつらいわぁ…目の保養―…。その藍色の瞳、いつ見ても吸い込まれそう…」
「俺の何が、そんなにいいんですかね」
石田さんは俺を見るたび、かっこいい、かっこいい、と言う。
一体どこが?と思う。こんな平凡な顔のどこがいいのだろうか?
「ハルくん、これ3番に持って行って!お願いね!」
頼まれた食事を3番テーブルへと運ぶ。
嫌な予感は当たる、と言うが、この嫌な予感だけは当たって欲しくなかった。
妙な危機感がさっきからずっと俺の中に渦巻いていたのだ。危ないぞ、と。
何が危ないのかは分からない。ただ、この日々が崩されるような、そんな感覚に襲われた。
「…一縷………?」
目に留まったのは間違いなく一縷の姿だった。さっき理事長室の前で会ったばかりの、何ら変わりのない一縷が、何故かそこにいた。
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