アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
新緑の香りと澄み渡る青空
-
リレーのスタート地点に着き、ぐるっと周りを見渡すとリレーに出場する他の人たちが「は?」という顔をした。
まあ、そうだろう。
俺が出場して勝てる訳がないって思うよね。
A組は完璧に負けたって確信されてるんだろうな…
でも、今回は。
副会長としてではなく春乃として走ろうと思う。
そうしないと悲しむ人がいるから。俺はその悲しむ表情を見たくないから。
…強く、心に決めた。
だから、スタートの合図が鳴るや否や向かい風を切って、切って、切って、新緑の香りの染みついた風を裂いて。
必死になって、ひたすらに走った。
「はあ…っ…はあっ……」
周りを見渡す余裕なんて全くなくて、生まれて始めてこんなに本気で走った…ってくらい一心不乱に走った。
負けたくない、と思ったのだ。
今までは、ヘラヘラとしていることで周りになんと思われようが、別によかった。
けれど、今回だけはどうしてもそれが嫌だった。
「…はあ…っ…、俺、何位…?」
あまりにも一目散になっていたからか、自分が何着なのかも分からない。
『…A組が一位!!!』
だから、耳にアナウンスが聞こえてきた時、「嬉しい」よりも「嘘だろ?」という感情の方が勝っていた―。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 174