アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
強まる雨足、喜雨の調
-
「…うわ、さらに降ってきた…」
傘をずらして降りしきる雨を確認すると、足早に図書館へと急ぐ。
そうしないと、雨で髪が濡れて色が落ちてしまう、と思ったからだ。
運のいいことに図書館に着いた瞬間に雨が土砂降りへと変化した。
恐らく、このまま外を歩いていたらびしょびしょになっていただろう。
「えーっと、枕草子、枕草子はどこかな…」
古文の授業で扱った『枕草子』。
その美しい文体に惹かれてしまった俺は、内容をきちんと読んでみたいと図書館へと足を運んだ。
「お、あった…」
“春は曙。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる”
ペラペラとページを捲ると、あまりにも有名な一節が目に飛び込んできた。
“…秋は夕暮れ…”
続いて目に飛び込んできたのは“秋”の一文字。
意識していないはずなのに、こうして異常な程に気にしている自分がいる。
どれだけ時間が経っても、俺は先に進むことができない。
目を逸らして逃げることしかできていない。
小脇に分厚い書物を抱え図書館を後にすると、自室に戻る為にてくてくと歩みを進める。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 174