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会長視点。
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ポタポタと雫が床へと落ちている。
茶色に色付いたそれは、一見すると「何が起きたのか」と思わずにはいられない光景だった。
その雫から視線を上に逸らすと、そこには明るい金色と黒の髪がまだらになった桜川がいる。
あまりの驚きに、一瞬己の目を疑った。
びしょびしょに泣き腫らした顔に、目は赤く充血していて見る者の心を抉る。
「…これを使ってください。風邪を引いてしまいますよ」
心の中でさまざまなことを考えた挙句、口から絞り出すことが出来たのは何ともありきたりな言葉だった。
雨に濡れたから風邪を引く、そんなことはどう考えても当たり前のことで、どうして私は桜川に対してもっと優しいことばをかけてあげられなかったのかと、自分が発した言葉に後悔する。
彼は雪のように白い手を私が差し出したハンカチへと伸ばしながら、「…汚れちゃいますよ」と小さく言った。
「…そんなことは気にしなくていいですから」
なんて綺麗な声なのだろう、と思った。
少し掠れた声は、いつもの彼からは考えられないほど落ち着いていて、美声の一言では表現できない深みを含んでいた。
そしてその中には、確実に物悲しさも含まれていた。
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