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夏の花火と泡沫の心
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確かに実際は必死に勉強したけどね。
成績上位であることはここに在学していることの条件だし、それで学費が免除されている訳だし。気を抜く訳には絶対いかない。
「しばらく春乃様に会えなくてほんっとうに僕悲しいです……春乃様のご実家は遠いんでしたっけ?」
「遠くないよ~、ここから一時間くらいだからねえ~。でも帰るのは久々かなあ…三月に帰省して以来帰ってないから」
「…ええっ、それから一回も帰られてないんですか?」
本当は別に帰ってもいいんだけど。
家族と顔を合わせるのが気まずいという理由で、必要最小限しか帰らないようになってしまった。
この姿で帰ったら絶対にそのことに関して言及されるだろう。
問いただされて理由を話すことが躊躇われるから、素の姿で帰るしかない。
けど、繕っていない自分で長時間過ごしていると、心が壊れてしまうような気がして。
「えー、全校集会をこれにて終わります。皆さんこれから自宅に帰ると思いますが、気を付けて帰ってくださいね。…自宅が遠い生徒も沢山いると思いますので……」
体育館の外では、蝉の重なり合う鳴き声が大きく響いていた。
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