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夏の花火と泡沫の心
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「凄いですね!会長。一発で取っちゃうなんて」
俺が手に持っているのは今さっき指差した星の形をした置物。
射的なんて確実に初めてやったはずなのに、なんと会長は一発で弾を当ててしまったのだ。
確かに会長は何でも出来る人だと思ってたけど、流石にこれは驚いた。
「春乃」
会長が俺の名を呼ぶ。
薄暗いせいではっきりと見ることの出来ない顔が、幻覚なのか赤く色づいているように感じられた。
常に冷静な表情を浮かべている会長が、何かに動揺している。
それは、間違いなかった。
「…今から私が言うことは独り言だと思って聞いてください。けど、今言わないと絶対後悔するから言わせてほしいんです。
……春乃。私は、あなたのことが好きなんです。どう考え直してもその結論から逃れられなかったんです」
俯きながら会長は小さく言った。
その声は小さかったけれど、ちゃんと芯が通っていて人混みの中でも聞き取ることが出来た。
世界の時が静止して、何の感覚もなくなる。
喧騒も、雑音も、全てが無になって一瞬にして消え去った。
真っ白になった頭で今言われた言葉の意味を今一度反芻すると、徐々に何が起こったのかが理解できた。
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