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信号機(湊)...2
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信号が青に変わっても、
俺の頭の中は紅に染まっていた。
夏希の手。
近くの床に、救急車の中のガーゼ。
手術中と書かれたあの灯り。
全部、鮮明に思い出すことができた。
あの時の悲しみも恐怖も、
今もなお残る後悔も。
夏希は俺と付き合っているのに
裕翔の記憶はない。
育ててくれた母親のことも
小さい頃から一緒に遊んだだろう親友のことも
覚えていない。
夏希の中の時間は止まったまま。
だから、夏希と俺の間の時間も止まったまま。
例え俺のことを全部覚えていたって
俺が夏希のこと抱き締めて飛び降りたのも
その後、少しだけ記憶を失くしたことも
壮介から罵られるのを防ごうとしたのも
……その日にわかれたことも。
今の夏希は、しらない。
俺の性格も好き嫌いも、癖も小さないたずらも
覚えているのに。
俺との思い出は半分。
この状況。
まるで駅前の信号機みたい。
青に変わるまでが待ち遠しい。
でも、青に変わって動き始めると
事故に巻き込まれやすくなるじゃないか。
夏希の記憶が戻るのが待ち遠しい。
けど、戻してしまったらまた拒まれそうで
………怖い。
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