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古い石段を登り看守塔にやって来た
ここへ来るときはいつもこんな夜だよな
「同じ事ばかり繰り返して楽しいか?」
「黙れ」
タバコの煙が暗闇に立ち上る
今夜は針のような三日月
塔の窓からタバコを投げ捨て俺を見つめた
「お前もせいぜい気を付けるんだな・・・人間は必ず裏切る」
「話の意味がわからないけど」
「よく言う・・・お前、あいつに惹かれているだろ?」
「・・・・・・・・」
「弟の恋人だったよな?」
「奪うつもりはない」
「しかし人間は抑制が利かない動物だぞ」
「それはお前だろ」
「悲しみや苦しみを理解出来る人間同士が惹かれあわないわけがない、違うか?」
「だとしても俺はお前のように裏切った相手を殺したりはしない・・・そこに愛は本当になかったのか?違うね、あったからこそ許せなかったんだろ?歪んだ愛情すぎて可哀そうになるよ」
「黙れ」
「浮気しているかもしれない事を知っていてあえて泳がせていたのはお前だろ?そして確信になったから殺した」
「だから何だ」
「プライドが高いのもいいが人間は牛や豚ではないぞ、感情のある動物だ・・・お前は彼を動物のように扱っていたのか?もしそうだとするなら納得は出来るが」
「俺と別れた5分後だぞ・・・5分後に違う男に抱かれてよがり声を出していた、家畜以下だ」
「だったら本気で愛せる奴を見つける事だ、そうしないとお前は本当の殺人鬼になるぞ」
「クスッ・・・お前の愛した俺の弟とは大違いだと言いたいのか?」
「そうだな・・・大違いだ」
「だがお前もその弟を忘れかけているんじゃないのか?」
「・・・・・・・・・」
「まぁ、兄弟と言っても俺達はほとんど一緒に生活していなかったし実感は無いけどな・・・まさかその弟の恋人がお前だとはね」
「お前は何がしたいんだ?囚人のふりをしてまで何がしたい」
「最悪な場所で愛を見つける為だとでも言っておけばいいかな」
「最悪な人間が・・・が抜けているぞ」
「ふん」
「ついでに言わせてもらえば・・・そうだなシャワーだけでは物足りないから改善して欲しい」
「楓の為にか?」
「そうだと言ったら?矯正監様」
「嫌味にもほどがあるな・・・そんな肩書などどうでもいい」
「エリートのくせにひん曲がった性格ゆえの・・・殺しか?まぁ、矯正監なら誰も文句は言えないだろうし」
「人間を殺してなぜ悪い、死刑廃止?もしそうなったらお前達のような人間はどうなる?ここは救いを与えるための場所だ、被害者のな」
「正当化してもお前のやっている事は殺しをけしかけている人間にすぎない」
「黙れ」
「しかしそんな事など俺にとってはどうでもいい事だ、ここにいる限りお前は捕まる事はないし立派な肩書もある、ここの人間はお前のいいなりになるしかない」
「俺に説教か?」
「そんなのは無駄だろ?ただ楓が心配しているから来ただけだ」
「・・・・・・・・・」
「もし楓に手を出したら俺がお前を殺す」
「お前の物ではないのにか?」
「お前の物でもない」
「そうだな、お前の弟和海のものだ」
「・・・・・・・・」
「しかし忘れるな、選ぶのはお前でも俺でもない」
「楓だと言いたいのか?」
「違うのか?それとも弟を裏切る事は出来ないから諦めるのか?それならそれでも構わない」
「楓を愛したいのならまともな人間になれ、話はそれからだ」
「まともな人間ね・・・俺にしてみれば塀の外の人間の方が狂っていると思うが」
「まともなやつもいるさ」
確かにこいつの言っている事は正しいかも知れない
でもそれでは悲しすぎる
「月が綺麗だ」
「タバコをもらえるか?」
氷龍にタバコをもらい火をつけて夜空を見上げた
和海を裏切るのか?
しかし決めるのは楓だ
俺も心を決める必要があるのか
「お前を責めたりはしないさ・・・弟の事を忘れてもね」
「忘れたりはしない、憎しみもね」
「しかし心は揺れているはず」
「嫌な奴だな」
「お互い様だ」
「楓は優しすぎる、だから和海を裏切る事など出来ない」
「しかしそれで本当に幸せなのか?」
「・・・・・・・・・」
「それとも弟が怖いのか?」
「怖い?確かにあいつはお前と同じ匂いがする・・・しかし俺も同じ血が流れている事を忘れるな」
「ある意味、お前が一番怖いよ・・・」
「だから俺を怒らせるなよ?」
「クスッ、面白い・・・あいつを殺すのは簡単だがダリアには殺させたくない、かと言ってお前が殺せばもうここには居られない、だからお前は悩んでいる」
「IQだけ高い事は褒めてやるよ」
「だから人間がカスに見えるんだけどな」
「だろうね」
タバコをもみ消し窓から落とした
「そろそろ戻る」
「好きにしろ」
「お前も戻れ、楓が心配している」
「お前の為ではなく俺の意思で戻る事にする」
「素直じゃないな」
「お互い様だろ」
こいつも楓に惹かれているのか?
だとしたら今日死んだあいつは何のために殺されたんだ
本当に矛盾しているこの世界の中で正気を保てるのが不思議だった
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