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「漸く戻ったか」
思い出した
作業が終わって休憩してそのままあそこに行ったんだ
決して迷子では無いはず
「お腹空いたかも」
「だろうな」
抜け出しても怒られないの?
それともバレていない?
「楓、冬矢がうまくごまかしたんだよ!どこに行ってたの?」
「プリン工場見学ツアー」
「へっ?」
「成程・・・」
氷龍は気付いたみたいだけどクスリと笑い視線を逸らした
「それで、プリンはあったのか?」
「無かった」
「あったらどうするつもりだったんだ?」
「食べる」
「お前、そんな事をしたら殺されるぞ?」
「その時はその時」
「お前らしいな」
「冬矢、今更って言葉知ってる?」
「確かにそうだな」
その会話を聞き、もう一度小さく笑った氷龍
何が面白いのかは謎
「ねね、お腹空いたよ!俺は仕方なく楓を待ってたんだよ?」
その言葉に少しだけ驚いた
「ごめんね」
「俺は先に行こうって言ったんだけどこの二人が動かないしさ」
「そう」
やはり感覚が少しずれているような気がする
もし俺ならどうする?
燕羽が戻るまで待つか先に食べてしまうか
俺は待つかな
一人だけ残して行くのは気が引ける
それが多分普通の人間の考え
まぁ、ここで仲良くと言うのもおかしいけど冬矢と氷龍は別だしね
「氷龍も今日は楓を待つとか言うしさ~」
「燕羽、ひとついいか?」
冬矢が燕羽の会話を遮った
「何?」
「友達とかいたか?」
「失礼すぎっ!俺にだって友達ぐらいいるし」
「じゃ、お前にとって友達とはどういう人間だ?ちなみにこの中に友達はいるのか?」
「・・・・・・・・・・・」
燕羽が考え込んでいた
そんなに難しい質問では無いはず
「ごめん冬矢、質問の意味がよくわからない」
「例えば?」
「説明できないけど」
「そうか、では質問を変え・・・」
「ねぇ、お腹空いたから行こうよ!」
燕羽の違和感に冬矢も気付いた
質問に答えるわけでもなく、話を聞く事すら出来ない
「そもそもどうして楓を待つのかな?お腹空いてるのにさ」
「燕羽がもしここへ戻った時誰もいなくてみんな食事をしていたらどう思う?」
「ムカつくよ!」
「ならわかるだろ?とは言え、俺達は先に行くつもりは全く無いけどね」
「じゃどうしておかしな質問するの?意味が分からない」
「行くぞ」
「冬矢!俺の話を・・・」
「話を聞いて欲しいのなら俺の話も最後まで聞け」
「えっ?」
「冬矢、もういいでしょ?それとも今夜は夕食抜きになるのかな」
「すまない、行こう」
「楓に質問!」
「何?」
「友達はいますか?」
「いないかな」
「えっ、即答?」
友達ではない
冬矢達を言葉に当てはめるのなら・・・同志
「俺は友達じゃないの?ねぇ!」
「どうして友達だと思うの?」
「だって・・・」
「ここはどこ?街中?友達を作りに来たの?」
「違うけど傷付いた!」
「そう」
「友達でしょ?楓~」
「燕羽は友達が欲しいの?どうして?」
「それは」
「冬矢の質問の意味が分からない奴を友達とは呼びたくない」
「もういいよ!優しくしてくれたと思ったら勝手に突き放すとかあり得ないんですけど」
「俺は特別優しくしたつもりは無いし突き放したつもりもない」
「は?」
「もういいでしょ?先に行くよ」
「何それ!待ってたのに先に行くとか意味わかんない!」
「待つと言う意味を理解して欲しいかな」
「待ってたし!」
「俺は今ここにいる、先に行っても問題ないでしょ?」
「ある!どうして待っててあげたのに先に行くのさ?」
「クスッ」
「何?」
「待っててあげたね・・・それはどうもありがとう」
「なっ!」
氷龍と先に食堂に向かい椅子に腰かけた
何だか疲れたかも
深い溜息をついて机に肘をついた
「今夜のメニューはチキンのトマト煮だ」
「ありがとう」
ホント、食事が改善されてからまともな食事が出来る
普通のレストランと差ほど変わりはない
だけど・・・
「俺、これを食べるとアレルギーが出るんだよね」
「チキンか?」
「チキンは好きだけどこの煮込み的なものだけ」
「トマトかな?」
「わからないけど、ここに来て初めて食べるし」
「少し待っていろ」
「うん」
そんな会話をしていると燕羽達がやって来た
「げっ!トマト大嫌い!」
「好き嫌いはダメだぞ」
「だけどさ~、嫌いなものは嫌いだし」
俺は何も言わずに燕羽を見つめた
そして
「楓、ラムなら行けそうか?」
「うん」
「ではこれを」
「ありがとう」
氷龍が持って来てくれた料理はラム肉だった
簡単に焼いただけのシンプルな物
でもその方がありがたい
「待って!どうして楓だけ?おかしいよね?」
「楓はアレルギーだからだ」
「俺だって嫌いなんだけど同じでしょ?」
「違うな」
「どこが?」
「楓は嫌いな物なら手を付けないし空腹に耐えるはず」
「じゃ、これは何?」
「これは俺のお節介だ」
「意味わかんない!」
冬矢も困り顔だね
でも甘やかす事は出来ない事もわかっているらしい
「嫌いでも食べるか空腹に耐えるかだ」
「どうして俺にはくれないの?」
「そこまでお節介ではないからだ」
「何それ!」
その時、空気が変わった
「こんばんは、美味しそうなトマト煮込みだね」
「こんばんは、もしかして凛はトマトが?」
「大好き」
「信じられない・・・おかしいよ」
「おかしいと言われる筋合いはないし好き嫌いは個人の自由では?」
「気持ち悪い」
「燕羽、それ以上は何も言うな」
「だってさ~」
凛は燕羽を完全無視して俺に言った
「料理が違うけど楓もトマトが嫌いなの?」
「このチキンのトマト煮込みだけはアレルギー反応が出るから」
「成程」
「別にトマトもチキンも嫌いじゃないし」
「これから先、もし薬が必要になったらいつでも言ってね」
「氷龍より私の薬の方が安全ですしね」
「ありがとう」
「友達でしょ?」
「クスッ」
凛は些細な冗談のつもりだったはず
俺もそう
単なるジョークとして受け止めた
でも一人だけ違っていた
燕羽がフォークを掴み、凛に向かって突き刺した
一瞬の出来事
「やってくれるね、しかも先の丸いナイフではなく先の尖ったフォークとは恐れ入る」
さすが朱雀だね
咄嗟に凛を庇い燕羽の腕を掴みフォークを燕羽の眼球すれすれで止めた
普通ならこのまま刺されているはず
「凛、怪我はないか?」
「大丈夫、楓・・・任せてもいい?」
「そうだね、まずフォークを置いて欲しいかな」
朱雀はフォークを床に落とし腕を離した
「教育係さん」
「俺かよ・・・はぁ」
押し付けたつもりは無いけど・・・
自分でそう思っているらしい
「燕羽何故こんな事をしたんだ」
「何で?当たり前でしょ」
「説明しろ」
「楓は俺を友達ではないと言ったのにこいつは友達だと言ったからだよ」
「おかしいな、友達でしょ?と言った俺の言葉への返事は無かったはずだけど」
「でもさ!」
「燕羽、一度だけ聞く」
「冬矢、何?」
「謝るつもりは?」
「どうして?」
無いわけか・・・
そんなやり取りを聞いた後凛が言った
「楓、後は任せたから」
「うん」
冷たい表情で燕羽の顔を見つめ、凛と朱雀はいつもの席に着いた
「燕羽、何故俺ではなく凛を?」
「楓は強いから」
「理由はそれだけ?」
「それだけじゃないけど・・・楓と仲良く話してるのが嫌だった」
「冬矢と氷龍は?」
「どういう意味?」
「この二人とも俺は会話しているけど」
「それはいいんだ」
「・・・・・・・そう」
凛達に貸しが一つ出来てしまった
現状を把握できない燕羽とあくまでも約束を守ってくれた凛
普通なら殺されていたはず
「氷龍」
「何だ」
「凛に美味しいトマトをプレゼントしたい時は?」
「楓からのキス」
「じゃ、お願いね」
頬にキスをして微笑んだ
「騙されたが仕方がない、今度からは場所を指定する事にしよう」
「するとは限らないけどね」
「だろうな」
「なんなのみんな!楓だけ特別扱い?」
「楓は貸した借りは必ず返す奴だからな」
「はぁ?」
やはり氷龍の言葉も理解出来てはいない
これから先、どうするべきか・・・
かごに詰められたトマトを見て凛が微笑んだ
今日はこれぐらいの事しか出来ないけどね
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