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鬱陶しい
あいつが事件を起こしたおかげで彰との時間が無くなった
俺まで警察に行く羽目になるしいい迷惑だ
警察にいろいろ聞かれたけどもちろん何も知りませんでしたで押し通した
家族はとても優しい人達で、本当に感謝しているんですと優等生のいい息子を演じた
警察は当然優等生の俺の言葉を信じ、逆に励ましてくれた
俺は心の中で(ホントばかだよね)と思いながら涙を流した
あの女は心が壊れてしまい、病院送りに
あいつは当分病院生活、しかも全治一か月ではなくいまだに意識が戻らない状態
どうでもいいや
学校は仕方なく休む事にした
色々とやる事があったし、金曜日までに準備しておかないとね
まずはこの家の財産整理
貯金や家の権利書などを全て集めた
結構貯め込んでいたんだな
この家を売れば当分何もしなくても生活できる金額だ
月曜日
病院のドクターから言われた言葉
「残念ですが意識が戻る事はありません」
要するに脳死状態
倒れた時、頭を強く打ったのが原因らしい
冗談じゃない、こいつの入院費なんて払いたくはない
俺は話を聞きながら涙を流し、頭の中でいろいろな計算をしていた
火曜日
金さえ払えば何でも調べてくれる奴に金を渡し、病院のドクターの情報を探らせた
そのついでに女が隔離されている病院へ向かった
綺麗な花束を持ってね
女がいる病院はそこまで拘束はしない病院だった
そして鉄格子も無い
「ママ、少しは落ち着いた?」
「・・・・・・・・・」
看護師の存在がうざいな
「これ好きな花でしょ?」
「・・・・・・・・・」
「早くよくなってまた楽しく過ごそうよ・・・僕寂しいよ」
「・・・・・・・・・」
「ママ・・・ううっ・・・」
ウソ泣きもかなり上達したかも
看護師は気を使って二人だけにしてくれた
優等生の俺を信用したらしい
それとも、手土産が気に入ったのかな?
結構高くついたけど、仕方がない
看護師の気配が完全に消えたのを確認して笑いながら言った
「ねぇ・・・パパはうわ言であいつの名前ばかり呼んでいたよ・・・ママと離婚して一緒に暮らそうって何度も何度も言ってた」
「・・・っ!」
「あのさ・・・もう死ねば?生きていても仕方なくない?あいつはあんたの事なんてどうでもいいみたいだしさ」
「・・・・・・・・」
「簡単な事だろ?その窓から飛び降りればもう苦しむことも無い、一番賢いと思うけど」
「・・・・・・・・」
「愛されない可哀想な女、男に旦那を奪われた哀れな女・・・じゃね」
看護師が戻って来た
「僕、今日は帰ります・・・母の体に障るかも知れないので」
「わかりました」
「母の事、よろしくお願いします・・・たった一人の大切な母親ですので」
「早くよくなるといいですね」
「はい、ありがとうございます・・・いつまでも待っています、もう一度笑顔が見たいし」
「そうですね」
何とも言えない表情をしているね
傷付いた俺にかける言葉が見つからないんだろ?
でも、すぐにその言葉が見つかるさ
「ではこれで」
「気を付けて」
早く、早く、早く
俺を喜ばせてよ
「あっ!ママ!!」
いいぞ
早く飛び降りろ
「いけません!そこから離れて!」
「ママ!ダメ!!」
普通に止める事は出来る距離
だからあえて転ぶ演出までした
そして消えた姿と鈍い音
看護師の悲鳴と集まる人達
「ママーーー!」
作戦通り
最後にいい母親を演じてくれたね、ありがとう
水曜日
病院側の言い訳がウケた
でも、精神科だし仕方がないよね
葬儀とか面倒臭いけど家族葬で速やかに終わらせた
遺骨は寺に持って行った
供養などするつもりはない
そして保険が舞い込む電話がかかって来た
本当にいい母親だった
彰から電話があった
すごく心配してくれていた
彰の心配そうな顔が浮かんで来た
彰が泣くから俺が心配になったしね
ずっと話をしていたいけど、今は我慢
泣きながら返事をしていた彰との電話を切った
そして依頼していたドクターの情報を手にした
運がいい事に担当のドクターが適役だった
「燕羽君、今日は早いのね・・・お父様は元気よ」
「よかったです」
元気の意味を教えてよ?
ホント、バカじゃない?
「やあ、燕羽君」
「こんにちは」
向こうから獲物がやって来た
「ドクター、母があんなことになって僕これからどうしたらいいのか・・・」
「辛かったね・・・向こうで話をしよう」
「はい」
人生相談とでも思っているのかな?
残念ながらそうじゃない
「お母様は本当に・・・」
そんな事はどうでもいい
「ねぇ、相談があるんだけど」
「相談?」
「貴方にはいい話だと思うけど」
「どういう意味なのかな?」
「借金・・・しかもキャバクラ狂い、そして病院の金にまで手を付けている」
「えっ!?」
「どうかな、その借金プラスアルファーで俺の相談に乗って欲しいんだけど」
「どういう意味だ?」
「500万でどうかな?」
「だから何を言って・・・」
「殺してよ、簡単でしょ?脳死状態なんだしさ」
「何を言って・・・」
「死因何てどうにでもなるんじゃない?もう死んでいるも同然なんだし俺はむしろ貴方に感謝すると思うよ」
「・・・・・・・・・・・」
「考えてみてよ、俺は母親を亡くしこれからの人生死んだも同然の父親の面倒を見る未来の無い生活しかない・・・わかるでしょ?」
「何を言っているのかわかっているのか?それに安楽死はまだ・・・」
「認められていない事ぐらいわかってるからこうして頼んでるんだけど・・・考えてみてよ、男と浮気して刺された父親のどこに同情の余地があるの?」
「・・・・・・・・・・・」
「いい話だと思うけどな、金は今払ってもいい」
「少し考え・・・」
「今返事が欲しい」
「しかし・・・」
「絶対にばれないよ、俺と貴方は共犯者、貝のように口を閉ざせばいいだけの事・・・でしょ?」
「・・・・・・・わかった」
「これは人助けなんだ」
そう言って現金を渡した
「領収書はいらない、これは貴方のお金だから」
「ああ」
「じゃ、今夜あたりさくっと終わらせてね」
「・・・・・ああ」
金ってホント、役に立つ
悲しいかな人間はその金が大好物だ
そして深夜、電話がかかって来た
そう、あいつの容体が急変したと
俺は急いで病院へ行き、いい息子を演じた
「燕羽君、手は尽くしたのだが・・・」
「いえ、本当に今までありがとうございました・・・本当にっ・・・ううっ・・・」
あのドクターも俯いていた
そりゃそうだよね
どんな顔をすればいいのかわからないのだろう
警察沙汰にもならず俺は悲劇の主人公を演じた
そしてあいつの保険金も舞い込むらしい
本当に幸せを感じる事が出来た
今日は最高の日だ
木曜日
「幸せだろ?愛する奥さんと同じ寺に来れたんだからさ」
ホント、笑える
愛する人は残念ながら塀の中
安心して、俺がちゃんと伝えておくよ
もしかしたら後を追って来てくれるかもよ?
有り余る金と自由を手に入れた
これから漸く俺の人生が始まるんだ
しかし、葬儀屋は暇なんだね
お通夜だの戒名だのどうでもいいしね
適当な理由をつけてさっさと火葬場に運んでもらった
手続きとか面倒臭かったけど仕方がない
会社の人間が家にやって来てホントにうざかった
どうして葬式をしないのかだの墓はどうしただの、関係ない事でしょ?
墓なんていらない
俺はあいつらの息子ではないし、愛情も無い
生前は立派な人だったかも知れないけどどうでもいい
棺桶も一番安い物にした
消えてなくなる物にまでお金はかけたくないっての
やれやれ・・・何だか疲れたけど明日は金曜日
久しぶりに彰と会える
楽しみだな・・・今夜は嬉しくて眠れないかも
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