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一時間と引き換えに。1【kypp】
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ピンポン。ガチャッ。
「……ん、……んん……」
うるさい。
ピンポン、ピンポン。ガチャガチャッ。
「ぅ、ん……ん……」
うるさい。
ピンポン、ピンポン、ピンポン。ガチャガチャガチャッ。
「……」
うるさい。……鳴り止まない。
すぐ横に置いてあったメガネをかけて玄関に向かう。
寝ぼけた頭には雑音でしかないインターホンの音。
そしてドアを開けようと必死に回すドアノブの音。
それを止めるべく僕はドアを開けた。
「ぅわっ!?」
どすっ、と大きい音がした。
僕が開けたドアはそれの目の前にいた人物にぶつかってしまった。
大きい音はその人がぶつかって尻もちをついた音だった。
僕は開きかけたドアをゆっくり開けて痛そうにおでこと尻をさするその人に手を差し出した。
風は冷たく、その手は少し冷えてしまっていた。
「ごめんキヨ君、大丈夫?」
「…っ、気をつけろよぺーぺー!」
きっとこちらを睨むキヨ君は素直に僕の手を掴んで立ち上がった。
流石にあそこまでドアの近くにいるとは思わなかった。
思ってもドアをゆっくり開けるなんてそこまで思考は回らなかっただろう。
ごめんごめん、と適当に謝る。
「……あれ?なんでキヨ君ここにいるの?」
そう言うとキヨ君は呆れたようにため息をついた。
今日って何かあったっけ、と首を傾げる。
遊ぶ約束か何かしていただろうか。
「……今日ゲーセン行こうって誘ったの誰だよ」
そこまで言われて思い出す。
先週くらいに、久しぶりにゲーセンに行きたくてラインでいつもの4人を誘った気がする。
でもつわはすさんもれとさんも他の用事があるってなって。
それで2人で出掛ける事になったんだっけ。
そうだそうだ、思い出した。
「あー……ごめん、忘れてた」
また適当に謝って何気なく時計を見た。
12時30分。
それを確認してさっと顔が青ざめる。
「……キヨ君、待ち合わせの時間って……」
「え?あー、11時半。今から丁度……」
一時間前。
つまりそれほどキヨ君をこの寒空の中待たせていた訳だ。
それに気づいて申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
さっきキヨ君に手を貸した時、自分の手が嫌に冷たく感じた。
それは自分の手が冷たかったせいではなかった。
「キッ、キヨ君、あの、ごめ…」
「ぺーぺー。ちょっと中入れて」
キヨ君は僕の言葉を遮って返事も聞かず家の中へ入っていく。
僕はドアを閉めてその後を追いかけた。
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