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確かに雪の真白い肌には啓一が散らした花弁がいくつも散っている。
それを見咎められたのだろう。
実際がっついてるしな。
否定出来ない事実に、それでも2年も待ったんだと自分に言い聞かせた。
食べ始めた料理は見る見るうちに片されていく。
ぱくぱくと美味しそうに頬張る雪を見詰めながら啓一も料理を楽しんだ。
「明日の朝は何がいいですか?」
食後まったりとソファに身体を預けのんびりとする。
「今日みたいな和食久々で美味しかったからまた和食食べたいな。」
投げ交わす会話一つ一つが二人の生活を作っていった。
抱き合って眠りに落ちた夜、幸せを噛み締めていた。
柔らかい日差しに意識が浮上した。
優しく抱き込まれた体温がぬるい。
啓一の胸にぺたりと頬を当て擦り付けた。
巻き付いた腕が背を撫でる。
慎重に抜け出た腕にそっと布団を掛け身を起こした。
ぐぐ、と身体を伸ばし身支度に取り掛かる。
頭の中で朝食の準備を考えながら寝室を後にした。
啓一を起こすまでまだまだ時間はある。
のんびりと準備しようと動き始めた。
ことこと火にかけた鍋が匂いを立てる。
蓮根のきんぴらを皿に盛り付け、焼き魚の具合を覗く。
時計と見遣りもう一品、と冷蔵庫を開けた。
食卓には鰆の西京焼きに茶碗蒸し、蓮根のきんぴらと湯気の立つ味噌汁。
追加で作った出し巻き玉子もふっくらと焼けていた。
よし、と顔を上げ見遣った時計は丁度啓一を起こす頃だった。
エプロンをしたまま寝室の扉を開けた。
ベッドに腰掛け髪を梳く。
ふわふわの感触が気持ち良い。
「啓一さん、朝ですよ。」
目元に力が籠りうっすらと開きかける。
ゆるゆると持ち上がった腕に今朝もまた抱き込まれていた。
笑いを隠さず抱き返す。
「起きれますか?」
「うん、…うん。」
こくりと頭が上下に揺れる。
どうやら起きられるらしい旦那様の目はうすぼんやりと開かれていた。
少し身体を持ち上げ啓一の唇を奪う。
ちゅ、とリップ音が鳴った。
脇に手を差し入れ抱き起す。
座った状態にされた啓一が雪に腕を伸ばした。
「ゆきぃ…、キス、もっと……。」
可愛らしいおねだりに身を寄せた雪がぺろりと唇を舐めた。
「んん、、っ」
首に回された腕がしっかりと雪を包む。
寝起きの鈍い舌が雪に差し込まれ雪の舌を追っていた。
ちゅるちゅると舌を絡ませると甘い声が啓一から漏れ出た。
珍しい雪がリードしていた口付けも段々と力強くなる舌先に翻弄されていった。
離される間際きつく吸われた舌先にぞわりとしたものが走った。
思わず開いた目に映ったのはすっかり甘えたの雰囲気を取り払った啓一の目。
「おはよう。」
「おはようございます。」
濡れた唇を引き上げ交わす挨拶に互いに笑みが漏れた。
眼鏡を掛けてやった啓一に身支度を促し食卓に向かった。
ご飯をよそい、お茶を淹れ終える頃スーツの上着を手に啓一が顔を出した。
「あ!茶碗蒸しだ。
俺好きなんだよね~。」
「それは良かったです。」
上機嫌に席に着く啓一に飲み物を渡し食事を始めた。
口にする度美味しい美味しいと褒める啓一に照れくさそうな雪の笑顔。
丁度食べ終えた時、インターフォンが鳴った。
「あ、いいよ。
俺が出る。」
席を立とうとした雪を制し啓一がモニターへと向かう。
「おはようございます。
あと15分程で車を回しますのでご準備を。」
「はい、おはよう。
わかったからわざと顔近付けんな。」
林田のモーニングコールだったらしい。
覗き込んだモニターにはかなりのどアップで林田の強面が映されていた。
「あいつも心配性なんだよなぁ。
雪が居るからちゃんと起きてるってのー。」
林田との会話を早々に打ち切りぶつぶつと文句を言う啓一が洗面台でヘアセットをし、上着を羽織った。
今まで側近として近くに居た林田には寝起きにぐずり起きようとしない啓一の姿ばかり見ていた為その心配も仕方ない事だろう。
すっかり仕事の顔になった啓一に小さな袋を差し出した。
「クッキー作ったんですけど良かったら持って行かれますか?」
「え、お菓子も作れるの?」
しっかり両手を差出し受け取った啓一の表情が緩む。
「簡単なものしか作れませんけど、今日のはおからクッキーにしてみました。」
お茶にも合うと思いますよ、と話しながら見送った先には深々と頭を下げる林田の姿。
「いってらっしゃい。」
「うん、いってくるね。」
にこやかに交わした挨拶もぱたんと扉が閉まると一気に部屋の温度が下がった気がした。
ふう、一息吐き一人で部屋を見渡した。
啓一の所有しているマンションの最上階、1フロアが二人の家だ。
5LDKの内一部屋余っている程に、ここは広かった。
一つ一つの部屋の窓を開けていく。
リビングからベランダの窓まで開け放つと三月の冷えた空気が部屋を流れていった。
さて、掃除と洗濯をしよう。
気が向けば行動は早かった。
二人が汚したシーツや風呂、トイレの掃除が終わるのに対して時間は掛からなかった。
天井までは残念ながら手が届かなかったが、家具や床に至ってはぴかぴかになったと言えるだろう。
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