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立場上霧生組の構成員となっている雪も組の施設は使う事が出来る。
道場まで行けば組手も相手に困らないだろう。
「行ってみたいです、いいですか?」
「うん、勿論。
そしたら今日も行って顔出してみなよ。
俺、親父を話さなきゃだから雪暇だろうし。」
「ありがとうございます。」
花が咲くような笑顔で雪は喜んだ。
今日の昼は組で用意するように林田が動いていると啓一から聞いた。
なんとも万能な人だな、なんて感心していた雪と他愛もない話を続けていた。
ふとした瞬間に与えられる口付けに、絡ませ合った指に光るリングに。
二人の時を噛み締めた。
そろそろ支度を始めようと互いに衣裳部屋に移動した。
恐らくスーツで出掛けるであろう啓一と浮かないように色を選ぶ。
無難にモノトーンにまとめようと白のカッターシャツに黒のニットカーディガンを合わせた。
ボトムは黒のサルエルパンツで稽古着は黒無地のTシャツにしよう。
鞄に押し込み部屋を出ると洗面台に行こうとする啓一が見え後を追った。
「啓一さん、準備出来ました。」
「はーい、そしたら林田に電話してくれるー?」
「わかりました。」
リビングに戻り手にした携帯で林田の連絡先を選ぶ。
発信すると2コール目に繋がった。
「おはようございます、奥様。
ご用意はお済ですか?」
「おはようございます。
はい、啓一さんも今髪のセット終わったので。」
「了解致しました。
ではお迎えに参ります。」
通話を切ると仕事用に仕上がった啓一が目の前で微笑んでいた。
「連絡ありがとうね。
雪はそういうのも似合うんだね。
普段和服だからなんか新鮮。」
「ふふ、啓一さんも。
いつも通り恰好良いです。」
優しげな目元を銀色のフレームが飾りふわふわのパーマにきっちりと着込まれたダークグレーのスーツ。
身長も高く手足も長い啓一にとてもはまっている。
にっこりと返され互いに笑い合った。
額、鼻先、唇と軽く触れる唇を受け入れているとピンポーンと林田が来訪を告げた。
扉を開けると見慣れた無表情。
エレベーターで階下へ降りるとエントランスに車が付けられていた。
啓一に促され後部座席に座ると続いて啓一が乗り込む。
助手席に林田が乗り運転手に進める様指示を出した。
流れていく景色を眺めていると温かいものが手に触れた。
目をやると啓一の骨ばった大きな手のひら。
見上げるとにっこりと目を細められ笑みを返しながら指を絡め返した。
親父が住まう本部は啓一のマンションから車で30分程の距離にある。
本部には常時20人近くが居り幹部の統率の下賑わっていた。
親父は良く人を拾う。
街で彷徨うチンピラや路地裏で自らを切り売りして生きているような人間を拾っては組で面倒をみていた。
親父としては自立してさえくれれば足抜けも厭わないと言っているのだが、拾い子達は成長しても尚籍を抜く者はそうそう居らず霧生組に忠誠を誓っていた。
車が静かに停止した。
林田が助手席から降り後部座席のドアを開けると続々と構成員たちが集まってきた。
「お二人ともおかえりなさい。」
口々に投げられる挨拶にぺこりと会釈を返し啓一と連れ立って玄関の門をくぐった。
車を運転手に任せた林田が玄関の扉の横で深々と頭を垂れる。
促された空間には昼食の匂いだろうか美味しそうな匂いが充満していた。
「親父の所、挨拶に行くから。」
「はい。
ちょっと匂いに釣られそうなんですけど。」
笑みを溢し伝えると啓一も同意を返した。
「わかる。
すげーいい匂い。」
お昼はなんでしょうねぇ、なんて話しながら開いた組長私室は蛻の殻だった。
「あれ?親父居ないじゃん。
ってことはこれ、親父のか。」
「恐らくそうでしょうね。
奥様が来られるのを楽しみにされていましたから。」
理解が追い付かず会話を交わす二人を交互に見つめた。
「雪、おいで。
多分こっちに居るわ。」
手を取られそのまま連れて行かれた先は台所。
「只今戻りましたー。」
軽く言い放ち入っていく啓一に続き足を踏み入れた先では威厳たっぷりな霧生組組長の割烹着姿だった。
「おう、おかえりー。」
菜箸を片手に振り返る姿は途轍もない違和感がある。
「雪も。
おかえり。」
普段は鋭い目つきを和らげ迎えられると少し気恥ずかしく感じてしまう。
「…、只今戻りました。」
なんとか挨拶を交わすを親父に頭をわしわしと撫でられ笑みが零れた。
「もう出来るから二人は居間に行ってろ。
林田、手伝ってくれるか?」
「承知致しました。」
林田が居れば手伝う事もないだろう。
追い出された台所から二人は居間に移動した。
「組…、親父もお料理されるんですね。」
「ああ、普段は持ち回りで組の皆でやってるんだ。
たまに親父が、俺がやる!って言いだして台所ジャックしてるけど。」
まあ味の保障はするよ、笑う啓一はとても楽しげだ。
広い居間の片隅でのんびりとしていると着々と料理が運ばれてきた。
料理と共に構成員達も次々に集まり出し気付くと居間は人で溢れ返っていた。
「若、おかえりなさい。
道場に出ていたので出迎え出来ませんで申し訳ありませんでした。」
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