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異変と動揺 said天宝院 柊
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放課後にもう1度話そうと、そう言って出ていく律を見送った。出会って何日も経っていないというのに、自分が妙に彼に入れ込んでいるような……そんな気がする。
自分自身が他人を放っておけない性格なのは、重々承知しているつもりだったが……ここまでだったとは。
放課後。
律を迎えに行くと、教室には宮本小葉と秋葉の姿。
自分達が共にいることで律に何が起こっているかもしれないなんて、彼らは微塵も感じていないのだろう。
平気で一緒にいるのだから。
俺はそれに、少しイライラしてしまうのだ。
こんな感情は久しぶりだ。
▽
廊下を歩きながら会話をしていた。
他愛もない会話。
当然のように本題は、隔離された部屋でなければ話せない訳で。
ところがその会話が突然途切れて、着いてきていたはずの足音も聞こえなくなった。
立ち止まったと考えるのが普通なんだと思う。
でも会話が途切れてすぐに響いた乾いた咳の音が、俺の心情を穏やかに保たせることはなかった。
咄嗟に振り向くとそこには予想の斜め上をいくような。現実なのかと疑うくらいの光景。
さっきまで普通に話していた相手が、血を吐いて、床にへたり込んでいるのだから。
押さえつけた手では留まらなくなった赤い液体が、指の隙間から床に零れ落ちていた。
「……律っ、!?」
呆然としていた俺は、零れ落ちた雫の音で正気を取り戻す。
そのまま律に駆け寄った。
駆け寄っても反応が薄く、意識が朦朧としている様子の律を抱き上げる。
苦しそうに息を続けていた。
あそこに放置するのは、と思って何をするにせよ保健室に行くべきだと思った。
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