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「はる!」
「岡谷!久しぶり!元気だった?」
「すげえ元気!」
久しぶりに晴は高校からの同級生、岡谷と会う約束をしていた。
普段は、佐々木が不機嫌になるから極力予定を入れないようにしていた晴だったけれど、
今日は佐々木がサークルの合宿に行っている。それならばと誘ったのは晴だった。
「同じ大学なのになかなか会わないよな」
「敷地広いしね?しかも、俺文系だし」
「はるって本当、文系顔だよな」
「どういう顔、それ」
笑いながら、賑やかな居酒屋の奥へと進む。個室ではなかったけれど、ざわついたここは話すのにちょうどいいなと晴は思った。
高校時代の話や、いまのサークルの話、そして将来への不安。久しぶりに会う彼らの話題は尽きることがなくて。
岡谷は1年間だけ同じクラスで、よく佐々木と3人で騒いだなあと懐かしい気持ちでいっぱいになる。
「なぁ、そういやまだ佐々木と付き合ってんの。俺最近あいつとも連絡取ってねえや」
「…そろそろ終わるかも」
「まじ?喧嘩でもしたの」
「ううん、してない。喧嘩にすらならない」
初めて想いを告げたのは、佐々木のほうだった。それがいつの間にか立場が逆転して。
というより、佐々木が「堕ちた」だけ。それを喧嘩とは呼ばない。
「賭けに負けた。ただそれだけ」
「…ふぅん。よく分かんねえけど、今日は飲もうぜ!」
そう言って、岡谷は店員に向かって「生2つ追加で!」と叫んだ。
ーーー…
きゅ、きゅ、と人の気配のしない廊下を歩く。くたびれた上履きが目に入り、俺はため息をついた。
まるで今の俺みたいだ。
夜に近い夕方。自分の教室へと向かう。
もうすぐだ、もうすぐ。
一歩一歩終わりに向かって歩いていくと、それに伴って自分の意識が自分から遠くなっていくのを感じた。
ねえ佐々木、お願いだから。
一人でいて。
教室に着いた。俺が告白された、夕焼けに染まる教室。
その中で、彼は誰かを抱いていた。
そのシルエットはとても美しくて、
「佐々木、佐々木!」
教室のドアは開かず、外から叫んでも叫んでも、彼には聞こえていないようだった。
「…る、はる、はる!!」
「わ、っ」
「やっと起きた!お前酔いつぶれて寝るからさ~。しかもすっげえうなされてるから心配した」
「嘘、ごめん」
晴はガンガンと痛む頭をかかえながら、岡谷に謝った。直前まで見ていた夢を思い出して、そりゃあうなされるのも仕方がない、とそっとため息をつく。
実際、佐々木が浮気を始めたのは大学生になってからだった。
だからあの夢は事実ではなくて、けれど浮気とはそういうものだ。
思い出さえ、じわりじわりと侵していく。
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