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終わると、男は上裸のまま煙草に火をつけた。ホテルのシンプルな灰皿を手繰り寄せつつ、煙をフーッと吐き出す。
「ねえ晴くん、携帯教えてよ。今度またあそぼ」
「…その前に、誰か紹介してもらえませんか」
「俺だけじゃ物足りないって?ひどいなー、まぁ別にいいけど。どんなのが好みなの」
晴は思い浮かべる。
背が高くて、肩幅があって、脚の筋肉がしっかりしていて、
…晴は一つ一つの特徴を伝えていった。佐々木の特徴を。
自分が抱く相手として、佐々木の相手と同じ雰囲気の人を選ぶつもりだった。けれど今回のことで、晴が男を抱くのは難しいとわかったから、自分を抱いてくれそうな男をもう一人増やさないとと晴は考えたのだ。
次は女の人。そして最後は、佐々木に似た男の人。
「あー、いるよ。俺の知り合いにそんなやつ」
「その人の名前って」
「中田」
「じゃあその人がいいです」
万が一の偶然で、男の紹介してくれる知り合いが佐々木だということが起きたら笑えない。男の方が5個は年が上だろうから、その可能性がかなり低いことはわかっていたけれど、念のため。
「何て名前だったらNGなの」
「NGなんてないですよ」
ふふふ、まあいいけど。と男は笑った。煙草の香りが強くなったように感じた。
「晴くん、携帯鳴ってるよ」
「岡谷…友達から電話、」
「出ていーよ」
俺煙草吸って待ってるし、と男が言うから、晴は岡谷からの電話を取った。
『もしもし?はる?』
「うん、どうしたの」
『電話つながんないって聞いたからさ、かけてみた』
「あ、」
そうだ。岡谷は俺の友達だけれど、佐々木の友達でもある。何も考えずに電話を取ってしまったことを後悔した。
『佐々木が、お前と連絡取れないって電話してきたんだよ』
「大丈夫だよ、俺は」
『別れたのか、あいつと』
別れた。そう言葉にされると、じくじくと疼き出す心が形を保っていられなくなる。
「…ね、岡谷、電話つながったこと言わないで、お願い。一生のお願い。」
『はる、泣いてんの?やめろよ、電話じゃどうにもできないよ』
岡谷の焦る声が聞こえるけれど、晴の涙は止まらない。
高校生のとき、佐々木と些細なことで喧嘩した。そんなとき、話を聞いてくれたのは岡谷だった。
少しぶっきらぼうだけれど、優しい言葉をくれて、頭をぐしゃぐしゃーっと撫でられて、涙が引っ込んだのを思い出しながら、晴は膝をかかえて俯いた。
岡谷にそうしてもらえると、小さなプライドなんてどうでもよくなって、素直に佐々木に謝ることができた。そして佐々木も、俺の方こそ余裕がなくてごめんと抱きしめてくれた。
あぁ、愛しいよ。あの日々が、愛しい。
「もう、喧嘩とかじゃないんだ。俺は佐々木がわかんないよ。それでも佐々木は俺のことわかってくれるかな。最後にちゃんとわかってほしい」
『はる…』
「晴くん、泣いてばかりだね、ほんと」
煙草を吸い終わったのか、男が晴の方へと腕を伸ばしてきた。そしてするりと晴の手から携帯を奪うと、電源を切る。
「事情はよくわかんないけど。泣くくらいなら全部捨てちゃいな」
分かってる。
晴は元からそのつもりだから。
「でも"その写真"、悪用はしないでよ?」
俺は写ってないけどさ、と男はいたずらっぽく笑った。
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