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佐々木は結局、不安に押しつぶされた。
離れてしまったことで、佐々木の心の中でむくむくと育ち始める負の感情を、止められるものは何もなかった。
当たり前にいつも隣にいたから、離れたことで自分がどうなるかなんて想像ができていなかったのだ。つまり、甘かったということ。
晴の傷ついた顔を見るたび、佐々木は傷ついた。けれどそれ以上に満足もして。
あぁ、晴は俺のことが好きだ。だってこんな風に俺を求めて泣いてくれる。
かちり、かちり、カウントダウンが進んでいく音には気づかなかった。
「鍵…?」
郵便受けが新聞やチラシでいっぱいになっていることに気がついて、仕方なく佐々木はそれを回収した。
そこで目に入ったのは、見覚えのある鍵で。
ねぇ晴、これは晴にあげたものだよ。なんでここにあるの。ねぇ。
新聞の束を抱えて、佐々木はふらふらと家に入る。ばさりと落とすように置いた紙の束の中に、カシャ、という音がするものがあって佐々木は手を伸ばした。
それは茶色い封筒で、ひっくり返すと中から数枚の紙とDVDのようなディスクが出てくる。
「な、にこれ…」
何だこれは、何、ねぇこれは何だよ何なんだよ意味がわからないわかりたくもない、なぜなんでどうして晴、
晴が、
写真の中で他の誰かに抱かれている。
写真の中で他の誰かを抱いている。
封筒に入っていた写真を手に、佐々木はぐぅ、と胃の中のものを吐き出した。
「あぁ、あああ、ああああー」
喉の奥がひゅっと締まって、うまく息を吸うことができない。
気持ちよさそうに顔を歪めるその表情は佐々木が知っている顔そのもので、
ねぇ何で、その顔は俺だけのものでしょ、そう言ったでしょう。
ぐらぐらと視界が揺れて、佐々木は座り込んだ。
身体中が、震えた。
けれど、ディスクの方に伸びていく手を彼を止めることができなくて、
這いつくばるようにしてデッキに近寄り、テレビをつけて再生する。
『ね、本当に顔うつってない?ひゃあ、やだ晴くん、激し…』
ガツン
気づいたら、力一杯デッキを殴りつけていた。
画面は暗くなり、ジジ、ジジ、とディスクをまわす音だけが響く。
晴、晴、ねぇ、晴。
これは復讐なの。晴を傷付けた罰なの。ねぇ教えてよ、これを見せられて、俺はどうすればいいというの。
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