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悩みに悩んだ末、俺は転院を決意した。
と言ってもキリちゃんや院長先生が焦っているのが見て取れたから断ることはできなかったと言う方が正しい。
期間は2ヶ月と思っていたより長くて心配や不安が尽きないけど、帰って来れるんだもん。
初めて知らないところで1人で生活しなきゃいけないことに戸惑いを隠せないけど、頑張らないと。
「何かあったら必ずすぐに言うんだぞ。本当は環境の変化が1番体に負担がかかるから避けたかったのだが。王様になった気分であっちの医師たちをこき使ってやれ」
転院当日キリちゃんと院長先生、乃木先生、飯窪先生に見送られて迎えの車に乗った。
たかが2ヶ月。
何年もいたところから急に外へ出されると何もかもが不安で仕方ない。
2ヶ月だけなのに。
キリちゃんからは、行けたら週一で会いに行くと言われているけど。
行けたらって行けない人のセリフだもん…。
病院が近付いて来たら緊張と不安で震えが止まらなかった。
無言の時間が辛い。
行く前からこんな状態で2ヶ月もいられるかな…。
病院に着くとまず院長先生が挨拶をしに外まで出て来てくれた。
人当たりの良さそうなおじさまって感じ。
案内された部屋は個室で、だけどなんか、殺風景で寂しさがあった。
主治医の先生は40代くらいの眼鏡をかけた頭の良さそうな男の人。
お医者さんはみんな頭いいけどさ、、なんかちょっと周りとは違う感じ。
少なくとも元の病院にはいないタイプだと思う。
「今日は初日なので体を休めることに専念してください。初めての移動で疲れたんじゃないですか?検査は明日から始めますのでそのつもりで」
「…はい、よろしく、お願いします」
他にも、カチカチのベッドに座って話を聞いた。
なんだろう、この人の話し方。
すごく、冷たい気がする。
全くの他人と話すのが初めてだからそう思うのかな。
「では、また明日」
用が済んだらサッといなくなるのはキリちゃんも同じなのに、どうしてこんなにも違うんだろう。
心が痛い。
ひとりぼっち。
めんどくさいとか思われてるのかな。
わざわざこんな厄介者を受け入れなきゃいけなくなって。
仕事が増えたって思ってるかな。
あ…。もしかしたらキリちゃんたちはこんな厄介な俺を追い出すことができて嬉しい…とか?
いや、でも、まさか。
でも、だって、今まで他の病院に移されることなんて1度もなかった。
ついに我慢の限界で?
どうしよう、そしたら帰れない。
じきにここにもいられなくなる。
1人で生きていかなきゃいけないんだ。
キリちゃんたちは優しいから、そのための訓練をさせてくれているのかも。
優しいから、言い出せないのかも。
帰れる?なんて聞かなきゃよかった。
困っただろうな。
まだ帰って来る気なのかって。
最悪だ。なんで気付けないんだろう。
俺は1人で頑張らなきゃいけないのに。
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