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side 隼人
たくさんたくさん不安がよぎってどれだけ自分が甘やかされているのかを知ったら、申し訳なさとこれからのことが不安で初日は眠ることができなかった。
朝の6時にやったこともないラジオ体操に参加させられてすごく嫌だったしご飯の味が全然違くて違和感。
付属の海苔と牛乳だけ飲んで返してしまった。
「おはようございます。昨晩は眠れましたか?」
「あ、はい」
「向こうの病院はもう少し朝食が遅いみたいですね。まだお腹空いてなかったのかな」
「あ、そうですね。ごめんなさい」
「謝ることはないですよ。無理に食べなくても大丈夫です」
「あ、…はい」
「この後ちょっと遠いんですが、B棟のお部屋で検査をします。このカードをそこにいる先生に渡してください。最初にお薬を飲むと思いますが、副作用で熱が出ることがあります。辛かったり怠かったら途中でやめることもできますので伝えてくださいね」
「…はい」
20分後に行ってくださいと言われ、簡単な地図だけを残して出て行ってしまった。
地図がいる程の距離……。
辿り着けるかな…。
………ここ、どこ。
病室を出てとりあえず渡り廊下を通ったらおじいちゃんおばあちゃんがたくさんいるところに出た。
絶対ここじゃない。
「すいません、B棟って」
「はあっ??なぁに言ってんだあ?」
「B棟…」
「ええっ?なあにい?」
新聞を読んでいたおばあちゃんに聞いたけど、耳が…遠い。
「若いのはみんなあっちに行くよ」
隣のおじいちゃんが教えてくれたのはコンビニ。
ここ、どこなの。
看護師さんもいないし、どうしたら。
……あ。若いのがいるって。
コンビニで聞けば分かるかも。
「すいません、B棟ってどこにあるか分かりますか?」
店員さんに聞いたら分かると思ったんだけど。
「B棟……は確か……あっちだったよね?」
「え、違うよ、ここがCだから向こうでしょ?」
「あれ?そうだっけ?」
店員さん同士で話しているのを聞いて無理だと悟った俺はお礼を言ってコンビニを出た。
「あっ!すいません!B棟ってどこですか?」
出てすぐ看護師さんを見つけて駆け寄った。
「あ、B棟……はそっちだけどごめんね、今急いでるからあそこの地図見てくれる?」
けど道案内をしている余裕はないらしい。
どんだけ広いのここ。
柱にくっついている地図を見てもイマイチ分からない。
地図の勉強しとくんだった。
とりあえず歩いてれば着くかと思ってプラプラ歩いていたら主治医の先生が前から走ってきた。
「何してるの!?」
腕時計と俺の顔を交互に見て慌てている。
「えと、迷子…で…」
「道が分からなかったら誰かに聞くとかして下さい。30分以上遅れてます。付いてきてください」
聞いた、けど。
誰も教えてくれなかったよ。
「ここです。これから何度か使うことがあるので覚えておいてくださいね。カードは?」
カード?
「あっ」
忘れた。
「はぁ、取ってきますから入っててください」
「あ、ごめんなさい…」
スライド式の白いドアを開けると雑談を楽しんでいる先生たちがいた。
「えー、37分の遅刻。遅れるならそう言ってくれないと。こっちも準備してるんでね」
「……すみません」
「カードちょうだい」
「あ、今取りに行ってもらってて…」
「あぁそう。君学校の成績悪いでしょ?」
「……行ったことないです」
「あぁ、そうだった。病院住まいだったね。突っ立ってないでそこ座って。検査慣れしてないの?まずは採血からって君にとっては常識そのものでしょ?」
遅刻した上にカードを忘れたのは俺が悪いけど、そこまで言わなくても…。
「ほら、藍ちゃん採血してみて。昨日練習したでしょ」
「はぁーい」
さっき喋っていた看護師さんが俺の腕を取った。
練習って、初心者なの?痛そう。やだな。
「ねね、先生、ここでいいんだよね?」
「うん。そこらへん」
「いっ」
た。
「あ、ごめんごめん!おっかしいな…練習したのに」
「藍ちゃん遊ばないでよ〜。ただでさえ遅れてるんだから」
「っ…」
2回目も痛い。しかも血管入ってない。
「あれ?」
「まだですかねぇ?」
「この子難しいよ〜」
3回目にもなると恐怖で腕が震えてしまってもっと難しくしてしまった。
めちゃくちゃ痛いよ。
実験台にされてるみたい。
「えー、また失敗したら右腕に変えなきゃ」
4度目。
角度が足りなくて縫う時みたいに針が突き出てしまっていた。
「わ、ごめんなさい!痛いよね?ちゃんとやる!ちゃんとやるから!」
血まみれになった左腕を下ろして次は右腕を取った看護師さん。
いつまで続くんだろう。
ガラガラ
「これ、カードです」
主治医のメガネ先生が息を上がらせてカードを手渡した。
「おぉ、早いね。ねぇね、柏原くんって採血得意?」
「え、と。まぁできますけど」
「藍ちゃん下手くそでね。左手血だらけになっちゃったから右で取ってくれない?」
「はぁ。分かりました」
俺と話す時より若干くだけた感じの主治医。
手を消毒して先に俺の左腕の血を拭いてくれた。
ポタポタ床を赤く染めるくらい出ていたから見てられなかったんだと思う。
右腕にスーッと差し込まれた針は特に痛みを感じさせることもなくあっという間に終わった。
全然痛くない。
「ありがとうね〜」
主治医にヒラヒラ手を振る検査の先生を見ていたら心なしか頭がポーッとしてきた気がする。
採血したから、かな。
「はいじゃあこれ飲んで」
説明にあった副作用の強い薬。
渡された2錠を水で流し込んだ。
心電図とかCTとかMRIとか、よく聞く検査を次々とこなす。
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