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side 桐生
急いで転院先の隼人の病室へ行くと、そこは鉄の匂いが充満していて、たくさんの医師が隼人を取り囲んでいた。
『今ちょうど人工呼吸器を取り付けたところです』
と言われ、近付くと、身に付けている衣服には大量の血液と、床にまで滴り落ちている赤い液体が目につき、心臓が嫌な音を立てる。
「いや、ちょっと、状況を説明してもらえませんかね」
俺がさっきこの病院に電話した際、隼人の様子を見たここの主治医が心停止と言っていたからそれは知っている。
だが、それまでの経緯とそれからの現在が掴めない。
何故突然、人工呼吸器が必要になった?
昨日までは普通だったのでは?
「一旦外へ」
促されて仕方なく廊下へ出たが、何もかもが疑問だ。
「ではまず、先日の検査時のお話から」
は?何も連絡が入っていないから何もなかったのでは?
「1時間程で終わる予定の検査の途中、激しい頭痛を訴えた後に鼻血を出して意識を失ったのは連絡済みですよね?」
「………何を言っている?こちらにはなんの連絡も入っていない」
「はい?」
はい?じゃないだろう。
「こちらに転院させてから、待てど暮らせど連絡がこないので心配には思っていたのだが。まさか、こんなことになっているとは」
「申し訳ありません。それはこちらの伝達ミスですね」
「そんな、淡々と謝られても。で?どうして隼人はあんな状態に?」
喧嘩を売っているのか?
「恐らく次に目が覚めたのが昨日の深夜かと思われるのですが、その際大量の血液を吐いたものと見られますが、心臓は動いていたはずです」
機械がピコピコ鳴らなかったからとでも言うのか?
「先程桐生先生からのお電話を受けて数秒、心停止を知らせるアラームが鳴り響きまして、心肺蘇生を行ったところ、意識以外は回復しました。
ですが次第に呼吸が止まりそうになったので止む無く人工呼吸器を取り付させていただきました」
「俺が聞きたいのはそんなことではない。何故急に血を吐いたのか、これが明確に分からないと人工呼吸器を付けたところで意味がないではないか」
「…検査も途中で中断していますし、今はまだ何も分かっていません。
ただ一つ言えることは、しばらくの間昏睡状態に陥る可能性があるということです。
その原因解明のために全力を尽くしますので、どうか、お力添えをよろしくお願い致します」
判断を間違えたのはこの俺だ。
こんな病院に転院させてしまったことを今になって後悔するなんて。
「隼人の…服を着替えさせてもいいか。あんな血まみれの服をいつまでも着せておくのはとても気分が悪い。部屋が空いていたら是非替えてやりたいのだが、それは叶わない頼みか?」
せめて。眠り続けるにしても気持ちのいい環境で眠らせてあげたい。
血でカピカピになった服を着せたまま放置されるのは一人の人間として許せない。
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