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side 飯窪
桐生先生が隼人くんの主治医を降りて1ヶ月程。
休職にすれば、という院長の提案で退職せずに残ってくれてはいるが、なんというか全員に対して他人行儀で。
隼人くんのことを伝えても『あぁそう、で、それが?』って興味がない振りをされてしまう。
本当は毎日様子を見たいであろうに。どうして。
そして、これは自分の気のせいかもしれないけれど。
桐生先生が姿を現さなくなってからの隼人くんは少しずつ、元気をなくしているように見える。
俺のことも乃木先生のことも、院長のことだって、自分のことすら覚えてなくて、当然の如く桐生先生のことも覚えてはいないのだけれど。
なぜか、寂しそうに窓の外を見ていたりする。
まぁ気のせいなんだろうけど。
「おはよう。朝食食べられそう?」
今日も元気がないような隼人くんのテーブルに朝食のトレーを置く。
「あ……はい」
ほら、ね。なんか元気ない。
こんなに暗い子だったかな?って。
前は無理してた、とか?
無理に明るく振舞ってストレス溜めちゃってたとか。
「これ、隼人くんが好きだったオレンジ。覚えてる?」
気のせいかもしれないから知らないふりをして通常通りに接する。
「おれんじ…」
「甘くておいしいよ」
「………へぇ」
今日は一段と元気がない気がするな…。
「まだ、眠い?」
「…………」
無言で首を振る姿はとても眠そうというか、だるそう。
「体キツいんじゃない?」
「……きつくない」
不思議なことに目を覚ましてからの隼人くんは発作を一度も起こしていない。
それどころか、数値的に見て体調がいい日が続いている。
突然意識を失うこともないし発熱することもない。
至って健康な高校生。
ただ少し記憶がないだけで。普通の高校生と同じなんだ。
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