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side 隼人
いつも通りの朝。
いつも通りの採血。
いつも通りの、だけど。
「隼人、採血するぞ」
「最後?」
「手術が成功すればな」
体は何も触れてない。
「キリちゃんがやってくれるんでしょ?」
「あぁ」
「それなら成功するに決まってる」
「世の中絶対はない」
「ううん、キリちゃんは絶対だよ。俺の大切な人だから」
「…」
「キリちゃんの指って、綺麗だよね」
「まぁな」
「ねぇ」
「ん?」
「手術の直前、麻酔する時ってキリちゃんどこにいるの?」
「オペ室の外で準備してるか、その場にいる」
「手袋してるんだよね?」
「そうだな。どうかしたか?」
「手、繋いでてほしいなと思っただけ。本当はこの手がいいけど、手袋した手でもいいから。1人になるの、嫌」
大好きなキリちゃんの指を触っているはずなのに。
何も、感じない。
「手くらいいくらでも繋いでやる」
「ふふ、ありがとう」
「…怖いか?」
「ううん、怖くない」
「…そうか」
でも、戻ってこれなかったらごめんね、キリちゃん。
なんか、自信ないや。
成功しても戻ってこれないかも。
起き上がれないかも。
2度とこの手を握れないかも。
キリちゃんに会えなくなるかも。
だから今、いっぱい見ておきたいんだ。
大きな手も、綺麗な指も、かっこいい顔も、全部、本人すら知らないホクロだって知っていたい。
眠り続けても、忘れることだけはしたくない。
だからお願い。
もう少し、よく見せて。
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