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「ほら、ねえ、どう思う?ちょっと心が追いついてこないんだけど……」
「え………なに、これ」
部屋の中に備え付けられている洗面台には血を吐いたであろう痕があって、それですら酷い出血量なのに。
「ねえ、誰さ?自殺未遂までしたことのある彼に刃物を渡したのは」
ハサミの全体が赤く染まるほど何度も何度も自分を刺したんだね。
痛かったよね。辛かったよね。
「き、桐生先生に……」
「いやいや、乃木くん、これをあの人に見せるの?」
「え、でも、だって」
「第一発見者が俺たちでよかったよ。こんなの見たらあの人、死んじゃうでしょ」
だってさ、、。
一目で死んでるって分かるんだよ。
退院するってだけで大騒ぎだった彼がこの悲惨な状況を見て生きていられると思うわけ?
無理無理。
「体を綺麗にしてから、会わせてあげるのがせめてもの優しさじゃない?」
こんな、こんな最期は辛すぎるよね。
どうして相談してくれなかったの。
一人でなにを抱えていたの?
辛かったねって、どうして言わせてくれなかったの?
よく頑張りましたって、言いたかった。
どうして。
どうして君は、なんでも一人で背負いこんでしまうんだろうね。
どうか、どうか来世は楽しく健やかな人生を。
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