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中庭の景色が一望できる特別な病室。
院長が気を利かせて使わせてくれているこの部屋も、今日で丸7年。
入院自体は2歳の頃からしてるけど…。
今日は天気も良くて暖かそう。
ベッドを斜めに置いてもらってるから、首を捻らなくても外が見える。
自分、どんだけ特別扱いしてもらってるんだよ。
主治医の助手してる飯窪先生が貸してくれたファンタジー系の小説を読みながら桜を見るなんて、贅沢にも程がある。
最近は体調も良好だし、このまま退院できるかも〜と思う。
でも実際は全然退院できる状態じゃないらしい。
難しい事は分からないから何も言わないし、第一帰るところもない。
それが嫌だと思っていたのは10歳までで、今はこの生活の中から楽しみを見つけようと毎日必死。
これがもう楽しい。
コンコン、とノックして入って来たのは主治医のキリちゃんこと、桐生雅成(きりゅうまさなり)先生。
キリちゃんは俺が10歳の時からの主治医。
結構長い付き合いになる。
THE 大人って感じの雰囲気で、冗談はいつも聞き流される。
「体調はどうだ」
「昨日と変わらない。超元気」
「それは何よりだ。眩しくないか?」
「いい具合に照らされて輝いてるっしょ」
「採血するから腕」
ほらね?聞き流すでしょ。
うりゃっ、と腕を突き出せば容赦無く太い針をぶっ刺される。
「痛タタタタ、手加減!手加減忘れないで!」
クラッ…
スーッと血が抜けて行って合計で60ccも抜かれて軽い貧血を起こす。
ベッドの上でよかった。
立っていたら確実に床に這いつくばってた。
「血を抜かれても元気でいられるように太れ」
ぐったりする俺を横目に採血セットをしまうキリちゃん。
「点滴するから、腕」
うりゃっと出す力もなく、キリちゃんが自分で腕を持ち上げて点滴の針をぶっ刺した。
「…手加減してってば〜」
さっきまでの元気はどこへやら。
リモコンでベッドを倒されてそのまま横になる。
「小説読んでたのに〜。ねー読み聞かせてよ」
貧血を起こしていじけたようにキリちゃんを責める俺。
「冗談を言えるくらい元気なら読めるだろ。んじゃ」
かるーくあしらわれてムッとする。
本当、お堅いなぁ。
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