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なかなか戻ってこない桐生先生の代わりに、大人の女の人の声が聞こえた。
「あれ?キリちゃんいないの?」
チラッとカーテンを開けて狭いカーテン内をキョロキョロして言う女。
担当外の医者だ。
てか、キリちゃんって誰だよ。
「あ、桐生先生なら、さっきどこかへ…でもまた戻ってくると思いますよ」
桐生先生かよ。
キリちゃんってキャラじゃないのに。
笑えてくる。
「そうなの?
じゃあ、戻ってきたら久保が探してたって言っておいて」
「分かりました!」
久保先生。
綺麗な人だった。
って俺はあんな年上好きじゃないし!!!
心の中でボケツッコミをしていると桐生先生が戻ってきた。
「あ、桐生先生。
久保先生が探してましたよ」
「そうか。
運ぶぞ」
乃木先生の報告には興味がないらしく、俺に声をかけて軽々と持ち上げられた。
「え、桐生先生、どこ行くんですか!!」
乃木先生があたふたしている。
あの人は白衣を着てるけど医者じゃないのかな?
横抱きで廊下を歩かれて恥ずかしいけど、死ねるならなんでもいいと思った。
抵抗しない俺を疑問に思ってるのか、チラチラ顔を見てくる。
そんなに見るなよ。
「着いた」
結構歩いたところで止まった桐生先生。
部屋…だな。
ここで何すんの?安楽死だったらなんかもっと、処置室的なところでするんじゃないの?
「ここが今日からお前の部屋だ」
ガラガラと開けられたドアの奥には、桜が舞っていた。
大きな窓。
広い部屋。
1つしかないベッド。
そっと部屋の前に降ろされた。
「え…なんで…」
死ぬんじゃないの。
「殺すわけ、ないだろ」
「なんで…迷惑なくせに…」
「院長が提案してくれたんだ。
3月生まれだから、桜が見える部屋の方が合ってるって。綺麗だろ」
「個室は無理だって言ってたのに」
「それは前の主治医が言ったことだろ?
今の主治医は俺だ」
主治医がどうこうとかの問題じゃない…。
俺にはお金を払ってくれる家族がいないから。
最低限のことしかできないって。
「お金…ない」
「知ってる」
「借金まみれになっちゃう」
「ならない。タダだよ」
なんで…。
「今までたくさん頑張ってきたんだろ?これからも頑張って生きてもらわないと困るんだよ。だから、院長からの誕生日プレゼントだってさ」
「ほしくない。死ぬから!もう死ぬからいらない!」
嬉しくて泣きそうなのと、申し訳なくて泣きそうで、声が震えた。
「また迷惑かけるから、もう何もいらない…」
「迷惑かけたらなんだって言うんだい?」
桐生先生の背後から声が聞こえた。
院長先生だ。
「病院っていうのは病気を治すところなんだよ。何かをしてあげることで病気が治るなら、それを迷惑だと思う医者はいないよ。隼人くんは心が綺麗だからね。その分背負いこんじゃうんだよね」
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