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獣人の異世界へ
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12歳の夏
俺は異世界に勇者召喚された。
それから4年ーー
漸く魔王を倒して、故郷の日本に帰れる。
「元気でな!」
いつも笑顔でムードメーカーだった彼は目に泪を浮かべながら白い歯を見せて笑ってくれた。
「キリ様……」
王女様……
俯いてしまった王女の頭にいつものように手を乗せて微笑んだ顔をみせる。
「皆、元気でね」
全員で行きて帰って来ることは出来なかった。それだけが心残りだけど、ここは本来俺がいる世界ではない。
眩しい光りと共に俺の意識はなくなった。
◇◇◇
前後左右、どこをどう見ても白一色。真っ白過ぎて平衡感覚は失われ立つことも厳しい。左右の足の裏をくっつけ手で足首を掴んだ。
『お久しぶりですね』
懐かしい声。俺が召喚にあった時にあの世界に行く前にここに来ていたけど、やはりそこだったのか。
「これで日本に帰れるんだよな?」
『申し訳ありませんが、それは不可能です』
ーーは!?
「待てよ。あんた魔王倒したら戻してくれるって言ったよな?」
そのためだけに俺は剣を振るった。嫌なことも歯を食いしばって堪えた。
『そうね。1週間2週間だったら良かったんだけど、4年だよ? 4年間何処に行ってたと聞かれたらどうするの? まさか異世界に行ってたと言うの?』
「ふざけんな!!」
金髪長髪、自称神様の男でも女でもない6対12の羽根の生えた奴に怒鳴りつける。
『そんなに怒鳴らないでよ。それにさ僕と君のいた世界では管轄が違いすぎて無理なんだよね』
悪びれることなく言うヤツに腸が煮えくり返った。
「最初から嘘ついてたって?」
『まぁいいじゃない? 君だって楽しんだでしょ? 魔法とか使ってみたいって思ってたでしょ?』
当時12歳、魔法とかファンタジーの世界には憧れたのは確かだ。だけど親家族や友達を捨ててまで望んでない。
「還せ! 俺を日本に還せ!!」
『だから無理だって言ったでしょ。その代わり別の世界に送ってあげる』
「別の世界だ!? はっ! 次は俺に何をさせるつもりだ?」
鼻で笑ってやる。こいつの言うことは何一つ信じられない。
『特にないよー。普通に生活すればいいだけ。僕って親切だと思わない?』
「それだったら、皆のところに還せよ」
せめて仲間たちの世界に……
『無理だよー。だって魔王を倒した世界に勇者は必要ないんだよ。君の存在は脅威になるだけ。だから他のところ』
「黙れ!」
『君が黙って』
「ぐっ……」
神力で喋ることを禁じられた。
『最初からこうすれば良かったね』
全然良くねーよ!
心の中だけでも悪態をつく。こんな奴に屈するのだけは死んでも嫌だ。
『君を送るにあたって、優しい優しい神様は君が今まで培った魔力などの能力はそのまま引き継いであげるね。泣いて悦んでいいよ』
魔法が使えるのは有難いが感謝なんてするか。そんなのはせめての詫びだろ。
『君が終生を送る世界について簡単に言うと、獣耳や尻尾がある人たち、つまり獣人がいるってことね。人間は0.001%で黒髪黒目は君だけ、だから大切にされてモテモテ確実! 女性は全体の1割、そのため男性でも妊娠可能だよ。君もいっぱい子供産んでね』
ーーは?
こいつ何て言った?
俺の聞き間違いだよな?
『詳しいことは君の魔道具アイパッドちゃんで確認してね。それじゃ送るよー。えいっ!』
最後にふざけた掛声で、体が光に包まれる。
ーーあっ! 間違えちゃった。
おい! 今、な、んて言、った……
抗ってみたが意識を保つことは出来なかった。
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