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使い魔
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エンシェントドラゴンが言う通り、小さなドラゴンが盗賊団に囚われていた。人数は50~60っていったところか。
「エンシェントドラゴンよ。俺が貴方の子を取り戻してくる。今暫く待っていてくれーー【転移】」
探知しただけの場所に転移するのは、魔力を非常に必要とする。距離も離れていたため、魔力制御指輪2個の解除だけでは足りなかった。
魔力不足により眩暈と吐き気がする。
「貴様ら何者だ!」
「どうやって現れた?」
盗賊たちの相手をする余裕はなく、残りの制御指輪を外して俯いた。そして魔力が体に馴染むのを待つ。
「コイツらを捕まえろ!」
「オレが相手になるよ」
聞こえてきた声に顔を上げた。そこには、剣を1振りする度に2つの斬撃波を繰り出すスノウさんの姿がある。
移転する時に俺の体の何処かを掴んでいたのか。
しかし、強い!
斬撃波を使っていることから魔術剣士なんだろうが、無詠唱で次々と繰り出してる。普通だったら何とかスラッシュとか口に出すのだ。
そして、2つの衝撃波は火と光とバラバラだ。
どうやって1度に出してるの? あの剣に秘密でもあるのかな? 魔武器ぽくはないけど。
「何してるんですか? 早くドラゴンの子供を!」
つい見蕩れていたら叱責されてしまった。
俺は子ドラゴンの前に行き、目線を合わせるためしゃがむ。
「君の親が心配して探してるよ。連れていってあげるね」
『ありがとう人間。でもコレが……』
子ドラゴンの首には忌々しい隷属首輪が嵌められていた。
「【破壊(ディストラクション)】」
魔法が使用出来るなら俺にとって大したものではない。隷属首輪を粉々に破壊し子ドラゴンを解放した。
「おいで」
『ありがとう』
子ドラゴンを抱っこし、スノウさんに近づく。
「戻るので、何処か掴まって下さい」
スノウさんが肩に手を置いたのを確認して【転移】で戻った。魔道具【チェイン】を戻し、エンシェントドラゴンを解放する。
『父様ぁー!』
子ドラゴンは泣きながら親ドラゴンに抱きついた。
『人間よ、感謝する』
「無事再会出来て良かった」
子ドラゴンが親ドラゴンに甘えてる。
羨ましいなぁ。
『我は古代竜エンシェントドラゴンの長、ドンジェンと申す。この子はエンジェだ』
「俺はキリ・サイトー」
『キリよ、礼として我が一族の1匹を其方に使役させよう』
お礼にしては大き過ぎるよ!それに使役って好きじゃない。 使役っていう言葉で表してる奴隷と変わらないから。
「申し訳ないがお断りする」
『気高き我らは、礼を忘れてはならない』
「それならば使役でなく使い魔として求める」
ドンジェンは首を傾げた。この世界には使い魔というシステムがなくて何が違うのか分からないのだろう。
「使役は群れから離し主の命令に従う。反抗は許されず隷属首輪を着用させることが多い。これが使役だ」
『使い魔とは違うのか?』
俺は大きく頷いた。
「使い魔の場合、用がない限り今まで通りの生活が可能だ。契約時に主の魔力を使い魔に流すことにより、必要な時に召喚する形になる。隷属の首輪などはなく、お互いの体の1部に印が刻まれる。更に主が使い魔より弱いとなれば使い魔に殺されることもある。これが使い魔だ」
実力を認めて貰えないと契約は出来ない。その分、契約出来れば無体なことはしない。
『そのようなものがあるとは初めて耳にした』
「もしかしたら俺が初の使い魔契約をするのかもしれない」
ティグさんの先祖で俺と同じ元勇者が行っていない限り。
『其方は異なる世界から参ったものか?』
俺は目を瞠った。
「流石エンシェントドラゴンよ。そこまで見破るとは畏れ入る」
『過去にそのような人間がいたと伝え聞き及んでおるだけよ』
子ドラゴンのエンジェが俺の足元に来た。
『僕が使い魔になる』
『エンジェ!?』
『父様、助けて貰ったのは僕だよ。礼をすべきは僕』
子供なのにシッカリしている。
『だがお前はまだ子供だ。力も弱い』
ドンジェンの言う通り、戦闘には出せないだろう。
『キリ、僕では役に立てない?』
ドラゴンが落ち込んでる! その姿に胸がキュンとなった。
「そんな事はない」
顔が緩みそうになるのを耐え、ポーカーフェイスを保つ。
『僕を使い魔にしてくれる?』
「勿論だ」
『キリよ!?』
ドンジェンは俺が許可をするとは思っていなかったのか慌てて俺を呼んだ。
「ドンジェンよ。使い魔とは戦うだけではない。主に知識を教えたり魔法を教えたりすることもあれば、主を癒すために遊ぶこともある」
エンジェなんて癒し役にもってこいの存在だ。
『使い魔とは面白いの』
「何でも屋みたいなものだと認識してくれていい」
『ならば我も契約しよう』
ーーええっ!?
「ドンジェンはエンシェントドラゴンの長ではないのか?」
『左様。長い年月をただ生きるのは飽き飽きしてるところよ。偶には其方のために何かするのも面白そうよの』
エンシェントドラゴンが使い魔になってくれるというなら、俺にとっては喜ばしいこと。断る必要もないか。
「分かった。では契約をしよう」
ドンジェン、エンジェと順番に契約した。ピリっと首筋に痛みを感じる。きっと、そこに印が出来たのだろう。
2匹の首筋を見れば同じ場所に印が刻まれていた。
『初めてみる形の模様だ』
『可愛いね』
音符マークを2匹はお互いの首を見て確認してる。この印は俺の使い魔という証。実はこれ、魔力を流す時にイメージしたものが印となって現れる。
『其方の使い魔として、1つ助言をしよう』
エンシェントドラゴンの助言、それは未来を予知した上での言葉になる。忠言であっても真摯に受け止めなれば。
『そこの者に支えてもらえ』
そこの者って……スノウさん?
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