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18歳以上ですか?
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教えて
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俺はフードを取って、一歩一歩近付く。
「ねぇ、教えてよ。あなたの名前とか……」
手を伸ばせば触れる距離で足を止めた。
「あ、挨拶してませんでした。オレはスノウ・アルシア、ユキヒョウ族で少し前に150歳になり成人しました」
150で成人なのか、人間年齢だと15で成人になるってことなのかな。
「敬語やだ。俺はキリ・サイトー、17歳。キリって呼んで。あんたのことスノウって呼んでいい?」
スノウは俺の頬に流れてる泪を親指の腹で拭う。
「そう呼んでくれると嬉しい。でも、無理しなくていいよ。オレはキリに逢えただけで幸せだから」
本当に幸せそうにクシャッと笑った。だけど、その顔が俺の胸を更に締め付ける。
「……薬草集める」
俺からは踏み込めないし、1回この空気を撃破したい。そのため本来の目的を口にした。
「手伝うよ」
「スノウはランクいくつなの?」
「Aクラスで今Sになるため頑張ってるところ」
その年齢でAクラスとは凄いと思う。287歳のティグさんでさえAクラスだし、マレーさんもSクラス。
そう考えるとSSクラスのアルは更に凄いのか。
「スノウの斬撃波、どうやってるの? 何で無詠唱で2つ別々の属性出せるの?」
無言で薬草摘むのも気まずいから質問してみた。謎だったしね。
「あー……、それオレもよく分かってない。オレ魔術剣士なのに魔法苦手なんだよね。詠唱すると逆にヘナチョコになる」
そう言ってスノウはケラケラ笑う。
苦手なのか? それ!
無詠唱で放てることが本来は難しいのに、スノウは他の人と逆ってこと。
詠唱すると弱くなるなら得意とも言えないし……
スノウも規格外ってことか? 俺と同じで。
そこまで考えたら無性に可笑しくなって声を出して笑った。
「良かったー。やっと笑ってくれたー」
スノウの顔を見た途端、胸がドクンとする。
何て顔をしてるんだよ。愛おしくて堪らないといった顔に頭の中で警鐘がなった。
ダメだ! これ以上スノウと居たら……
「オレね。キリが笑っていてくれれば、それだけでいいんだ。番になれなくても、傍で貴方が笑う姿を見ていたい」
ガタガタと音を立てて何かが崩れていった。気が付いた時には自分からスノウに抱きつき顔を逞しい胸に押し付けてる。
その俺の体を優しく包み、「大丈夫、大丈夫」と繰り返し耳元で言われた。
何が大丈夫なのか。
スノウを番にしないこと?
俺が抱きついたこと?
ドンジェンの助言?
それら含めた全てに関してなのかもしれない。
「うぅー……、スノぉっ……」
「あっちで少し話しようか」
スノウが指した木の根本に手を引かれた。スノウが座り、その横をポンポンと叩いて促してくる。
そこでない。俺が望んでる場所じゃない。
涙目のまま睨みつけると、スノウは目を細めて笑う。
「おいで」
差し伸べられた手の上に自分の手を置いた。抗うことなく引かれるままスノウの腕の中に収まる。スノウの膝の上に横向きに座り、頬を撫でられる。
「オレたちユキヒョウはね、人間が大好きで人間の性質を知ってるんだ。獣国では唯一人間が生き残ってて、共存していくために子供の頃に獣人との違いを教わるんだ」
絶滅の危機にある人間、その人間を生かすためにユキヒョウ族は努力してくれてるのか。
「だから人間が、こういう時はどう考えるのか想像することが出来るの」
「辛くないの?」
「全く。オレね、人間が大好きなんだ。その人間が運命の番だったなんてオレ死ぬほど嬉しい。例え結ばれなくてもね」
決して嘘は吐いてなそうだけど……。
「俺は普通の人間とは違うよ? 魔力あるし……、さっきのドンジェンの助言を聞いてたら分かったと思うけど、この世界の人間でもないよ?」
それなのに純粋に好きだって言えるの?
「魔力がないから人間が好きってわけじゃないよ。人間が好きな理由はね、いっぱいあるけど1番は他人を思いやれるところかな。ほら、獣人って本能に忠実だからさ」
だから、とスノウは続けた。
「キリは自分を1番に考えていいんだよ。オレのことは気にしないで。ね?」
賛同することも嫌だとも答えられない。ただ、今は本能に従い彼に甘えたかった。
スノウの首に腕を回し彼の首筋に鼻を付けて、彼から香る匂いを満喫する。
スノウは時たま擽ったいのか捩る時があるけど、俺を引き離したりはしないで好きにさせてくれた。
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