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胸中
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テントに入ると毛皮の上に降ろされた。スノウは荷物の中を漁った後、1枚の紙を取り出しテントに張り付ける。
紙には魔法陣が書かれていた。
「……遮断?」
「正解。誰かが入ってくることもないし、こちらの声が外に漏れることないよ」
何か、するつもりではないよね?
「変なことはしないよ」
顔に出ていたのか慌ててスノウが付け加えた。
「ただ、泣きたいんじゃないかなって思って……」
「俺が?」
「泣かなくてもいいから溜めていること吐き出していいよ。あんな場面で何も思わないはずないよ」
横に座ってるスノウが俺の肩を抱き寄せる。スノウが言う通り、ぐちゃぐちゃしてる何かが胸の中で黒く渦巻いでいた。
でも、これを吐き出したら……
自分の汚い部分は見られたくない。だって、嫌われたくないから。
そこまで考えて嘲笑した。
「どうして、そんな風に笑うの?」
「だって俺にはアルを責める資格がないから」
スノウに対して気持ちが向いてる。そんな俺がアルを束縛しようなんて自己中すぎるだろう。
「オレのことで、そう思うの?」
「うん」
「運命の番は別だよ。オレもアルジェント殿下もキリだけを愛し慈しみ守るものなの。キリはそんなオレたちの愛を一身に受け入れてくれれば、それだけで満足なんだよ。オレたちをキリが独占していいんだよ」
そうは言っても俺だけ2人を縛るのは何か違う気がする。
「オレはされたいよ。自分以外を見ないで、触らないで、話しかけないでなんて我儘言われたら死ぬほど嬉しい」
顔を上げた。スノウと視線が交わると、彼はふっと優しい笑みを浮かべる。
彼になら言ってもいいのかな? 汚い俺の部分まで受け止めて愛してくれる?
「ねぇ? 何でアルは兎を剥がさなかったの?」
「多分……、本能かな? 弱い者は守るという、ね」
「口で脅すことは出来ても実行は出来ないということ?」
「後、ラピヌさんが兎族なのも原因かな。兎族は自分の魅力や強者の性格を分析して、守ってもらうのが得意な種族だから」
「スノウもなる? アルみたいに」
「オレは大丈夫。何よりもキリが優先だから」
兎を蹴っていたし、その言葉は信じる。
「アルは俺より本能が優先ってこと? 俺のことは大事じゃないってこと? っていうか、何で兎? 兎が俺を嫌ってるの知ってて一緒にいるってことは、俺に傍にいて欲しくないってこと? ってか何で兎は俺が嫌いなの!? 俺がアルに甘やかされてるのが、そんなに嫌なの!? アルは、もしかして番になったこと後悔でもしてるのかな? それなら言ってくれれば、いつでも別れるよ? 無理にでも解消してもらうよ? アルにとって俺って何なの? 運命の番って何なの? こんな想いするなら、運命の番なんていらないよ!」
支離滅裂で自分でさえ何が言いたいのか分からない。不満を口にし始めたら止まらなかった。こんな事、本人に言えば元に戻れないところまで行ってしまうかもしれない。
だから、さっきアルの手を拒んだ。
スノウに目の下を親指の腹で撫でられて、自分が泣いてることに気が付いた。
「……ごめん」
スノウに言っても、どうにもならないのに。
「もっと言っていいよ。聞くことしか出来ないかもだけどね」
「俺のこと嫌いにならない?」
「全く。逆に嬉しいかな。キリのこと全て知りたいから」
綺麗なだけでなく醜いところも全部と、屈託のない笑顔で伝えてくれる。
「スノウ、大好き!」
思わず出た言葉に自分自身で驚き、口を両手で抑えた。スノウは目を丸くした後、へにゃとだらしない笑顔になる。
「えへへ~。どうしよう、凄く嬉しい! ヤバイ、泣きそうかも」
スノウの目は潤んでいて今にも涙が零れ落ちそう。
「ね、寝よう!」
言った言葉は嘘ではないけど、言うつもりはなかった。せめてアルに報告してから伝えなくてはいけないこと。
これ以上、話してたら体まで求めてしまうかもしれない。
男に愛されることを知ってしまった淫らな体は、既に彼を欲しがり始めて奥が疼いていた。それを見て見ぬ振りして寝るために横になり目を閉じる。
「オレも大好き、愛してるよ」
甘い囁きを耳にしながら夢の中へと旅立った。
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