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「あの、松信さん、爺様に文字習ってるんです!それって、手紙の返事書く為だと思います!」
俺は洋一さんの腕を掴み、必死でそう言った。
「松信さん、いつも俺の写真褒めてくれるんです!口数少ないけど、凄く優しいって分かるし、口数少ない人って上手く言葉に出来ない人が多いから、伝えたくても、上手く言えないだけなんです!手紙だって返事書きたいから文字習ってるんだと思うし、だから、だから、あの、」
俺も言葉を使うのが下手なのを忘れていた。
勢いで喋っているけど、洋一さんは困った顔をしていて、俺がもっと上手く言葉を使えたらって後悔した。
「どうして君が泣きそうな顔をしているのかな?」
洋一さんは困った顔から、少し優しい顔に変わった。
「君の必死な気持ちは良く分かったよ」
洋一さんは自分の腕を掴んでいる俺の手を優しく握ると、自分から離した。
「洋一さん、僕からもお願いします。松信さんはずっと待っていますよ。ユノの言う通り文字を習っているのは洋一さんに手紙を書く為です。」
雅美さんの言葉で洋一さんは、
「ありがとう2人とも」
と微笑んでくれた。
「ありがとう。君も‥‥」
洋一さんは俺の頭を撫でた。
後で聞いたら俺を中学生だと思ってたらしい。
そんなに童顔?なんて、後から悩んだ。
それから俺は雅美さんに家まで送ってもらった。
◆◆◆◆◆
「明日、お見舞い行くってさ。良かったなユノ」
車内で雅美さんに頭を撫でられた。
「うん」
「明日、病院に行こう」
「うん、お見舞いでしょ?邪魔しちゃうかも」
松信さんと上手く仲直り出来たらいいな。なんて、本気で願う。
「違う、足」
雅美さんは俺の足を指差す。
あっ、‥‥‥そうだった。足‥‥‥
「いや、大丈夫だし、あ、ほら、明日は」
「だめ!絶対行くからね!全く、手も治ってないのに!」
雅美さんが珍しく怒っているようで俺はなんだかシュンと心が沈む。
そうだった、また迷惑かけてる。
しょんぼりとなる俺の頭を優しい手がフワリと置かれた。
「怒っているわけじゃないよ。ユノは直ぐに、無理をするし、我慢するだろ?それが僕や爺様は寂しいんだよ。きっと、アキラも」
優しい口調。
「無理や我慢しないでくれる?」
質問というより、お願いに近い言い方。
俺は頷くしかなく、
でも、強制じゃない。
優しさが心にじんわりときた。
「じゃあ、明日は病院。約束!」
雅美さんに約束をさせられた。
その約束が嬉しかったりする。
家族みたいだ。
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