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離れずに傍にいて【勝生勇利】
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『勝生選手はどうやらこのヴィクトル・ニキフォロフ選手との思い出のあるこの曲を進化させるためにライバルである3人の選手に指導を頼んだみたいですよ』
『それだけ、この曲が大切ということですね。』
僕にはまだまだ色気が足りない。
ジャンプの幅、高さも他の選手に比べて足りない。
僕には足りないことだらけだ。
でもヴィクトルを驚かせるには身に付けなければいけなかった。
悲痛の表情にほのかに色気に似た哀愁をただよわせる。
〈僕を離さないで…置いていかないで。どこにいくの?どうしてどうして。今…どうしているの〉
ヴィクトルが僕を置いていったあの日の感情が重なる。
ひとつひとつの動作にしなをつくる。お尻をクイっとあげて背中をしならせる。
腰や手の滑らかさが大切だとクリスが教えてくれた。
離れてほしくないなら全身から叫ぶんだ。
いくなと。
すがれと。
誘えと。
そして手の中に落とせばいいと。
『おや、ニキフォロフ選手のステップとややちがうようですね。このあと審査員席のほうに大きくより離れていく振付だったはずですが…おっとリンク外で待っていたヴィクトル・ニキフォロフ選手の方に近づき胸ポケットに入っていた薔薇を投げました!』
本来なら僕の解釈的に少し自虐的な笑みを浮かべているんだけど、今回は受身でなく攻めの姿勢でやっているから挑発的にほんの少し小悪魔のような笑みを浮かべて薔薇をなげた。
〈ねぇ?離れずに傍にいてくれるでしょ?〉
という意味をこめて。
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