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『っ…』
弾けた。
ぼぉーっとピアノを眺めながら余韻に浸る。
今日の演奏は本当に楽しかった。ずっと一人で弾いてたから、誰かと一緒に弾くのはもう十数年ぶりだ。
ふと、視線を感じて顔を上げる。
『あ、アル、さん…』
俺と視線が絡むと、ニコッと微笑んでくれた。なんかすっげー紳士だなぁ。まあ紅茶の飲み方もかっこいいし、いかにも紳士だけど。
「ピアノ弾けたんですね」
『はい。…と言いたいところなんですが、この曲以外は全く弾けません。
アルさんこそ、ヴァイオリン弾けたんですね』
「ええ、昔習ってました」
そっか。これが弾けるって事は、相当な知識があるのだろう。すごくマイナーな曲っておじさん言ってたし。
「貴方のピアノは、他とは違って綺麗で繊細ですね。聞いてて耳が痛くならないピアノは初めてです」
『そうなんですか?』
他のピアノを聞いたことがないから分からない。
でも、
『アルさんのヴァイオリンの方が綺麗だと思います。一瞬想像の中の演奏かと思いました』
「ふ、ありがとうございます」
そう言って笑ったアルさんの顔は見惚れるほど綺麗だった。
いいなあ、美人で。いわゆるイケメンってやつだよな。俺の顔は童顔でお世辞でもかっこいいとは言えない。
「また貴方と演奏がしたい」
そんなことを言われたのは生まれて初めてだ。思わず『俺もです!』と答えてしまった。
『でも俺、他の曲を弾けないのでつまらないと思いますよ?』
「他の曲を弾けないなら練習をしましょう」
一瞬で論破。
「そうだな…この曲はどうですか?」
『あ、はい。了解です』
沢山の楽譜が並んでる棚から一冊の本を取り出し渡された。それを開いてある事に気付く。
ーーああああ!!!重大なこと忘れてた!!
『…楽譜読めません』
「は?」
うわあ、紳士なアルさんが「は?」って!「は?」って言った!!怒らせた!!!
俺はなんて馬鹿なんだ。ちょっとはベンキョーしとけばよかった。
「じゃあどうしてあれを弾けるんですか」
素朴な質問だな。
楽譜を読めないんじゃ、答えは一つ。
『耳で聞いて弾きます』
ポカーン。
そういう効果音がつきそうな顔でこっちを見るアルさん。
イケメンが台無しだ。思わず笑ってしまった。
しばらく笑っていると、アルさんが不意に口を開いた。
「…貴方は思いもよらない方向で私達を裏切りますね。戦いもですが」
はぁ?俺がいつ裏切った??
戦いは…ルイさんとのやつだよな。それしかない。しかし、俺は裏切ってない。何も裏切ってない、ハズ。
むむむ???
ハァ。
イケメンの考える事は分からん。
そう区切りをつけて俺は考えることを放棄することにした。
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