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鬼軍曹のおうち-8
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翌週のレッスンは元々抱えている生徒との兼ね合いで9時からではなく昼を挟んだ時間帯で受けることになった。
朝の11時から午後2時までで間にお昼休憩が1時間ある。
食事のもてなしは1回限りかと思っていたのに、何故かあれから受けたレッスン3回とも律耶お手製のモーニングセットが支給された。
「別にお前のために作ったわけじゃないから勘違いするな。食パンが大量に余って消費するために仕方なくだ」
そう熱弁されては断る理由もない。
2回目、3回目ともなると食事を味わう余裕も出てきて、律耶の料理スキルの高さに気付かされた。
ピアノがこれだけ上手いんだから料理が器用にこなせるのも頷ける。
それでも、緊張感の中で取る朝食というもは胃によくない気がするので朝からよりも昼の練習のほうがありがたい。
12時を少し回ったところでインターホンが鳴った。下のエントランスに誰か来たようだ。
「休憩だ」
(うー。やっと緊張地獄から解放される)
緊張し過ぎてあまりお腹は空いていないけれど、とにかく恐ろしい律耶の視線から逃れられるのが嬉しい。
(とりあえずコーヒー飲みたいな)
午後からのレッスンはお腹が満たされて眠くなる。
鬼軍曹さまの前で居眠りするなんていう命知らずなことは絶対出来ないから、カフェインを補給しておかなければだ。
マンションの向かいにあるカフェに行こうと荷物を持って立ち上がると『待て』がかかった。
(え? 何?)
命じられるまま素直にソファーへ腰を下ろしたのに、律耶は腕を組んで座ったまま何も言わない。
休憩は1時間しかないんだからさっさと出ていかないと昼食を取る時間がなくなってしまう。
(何この不毛な時間?)
律耶と目を合わせるのが憚られて視線を置いていた時計の秒針がぐるりと回って少々焦れてきた頃に、来客を知らせるチャイムが鳴った。
スッと立って行って玄関で誰かと二言三言会話をする気配の後、すぐに戻ってきた律耶の胸には黒くて丸い桶が抱えられていた。
(お寿司だ!)
テーブルに乗せられたのは蒔絵の桶に入ったお寿司がふたつ。茶碗蒸しとお吸い物に、ペットボトルのお茶も添えられている。
「食え」
「え?」
「昼飯だ」
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