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雷の夜に-4
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『気に入っている』
そのフレーズが本音だとしたら、律耶の漣人に対する仕打ちは何だったのか。
あれは、どう大目に見てもプラスの感情を持っている相手への態度じゃあないと思う。
「俺は、お前がサークルに入って来た時から気に入っていた。お前が俺の隣に居ればいいのにといつも考えていた」
「……」
頭だけではもう理解しきれないモヤモヤが表面に飛び出してきたのか、身体のあちこちが痒くなってきた。
「いつも悩みを聞いて貰っている相手に相談したんだよ」
「そしたら、恋だろうって」
「コイっ?」
コイ、コイ、鯉、濃い、恋……。
律耶の口から恋なんていう単語が飛び出してきたのが受け入れられなくてフリーズしていると、律耶もショックを受けたような表情で固まってしまう。
「いえ、あの……日本語変換に手間取っていただけなんで気にしないでください」
こんなのでフォローになっているのかと自問自答していたけど、律耶には効果があったようだ。
なかなか行動に移せず、漣人に常にベッタリな凪を羨む律耶だったが、漣人がコンクールで大失敗したことで転機が訪れた。
ピアノのプロである律耶がコンクールでの演奏が上の空になるなんて事、普通だったらありえない。
もちろん、前夜の居酒屋であった出来事で動揺していた影響は多少なりともあった。
それぐらいの動揺、いつもの律耶なら簡単に乗り越えられた。
しかし、あんな気の抜けた演奏になったのは日本に残れば凪の居ないところで漣人に近付くことができるのではないかという考えが頭の隅にあったからだった。
コンクールで落選し、海外留学の権利を棒に振った原因が漣人自身にあったとは思ってもみなかった。
「凪から教育係のオファーが来た時は天が与えたチャンスだと思った。凪が居ないこの少ない時間で俺のものにしてみせると心に決めた」
そんな律耶の足を引っ張るのは他でもない律耶自身だった。
「毎朝、今日こそは凪みたいに優しくしようと決意するんだ。だけど実際お前を目の前にするとキツく当たってしまう。毎日後悔した。自分の性格をこんなに呪ったことはなかった」
漣人は律耶の目を真っ直ぐに見据えて首を横に振った。
夏休みに入って、律耶の家に通うことで律耶の自分に対する気遣いに触れる事が出来た。
(先輩が本当は優しくしようとしていること知っています。凪先輩のストレートな優しさとは違う内に秘めた優しさ、しっかり心に届いています)
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