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雷の夜に-5
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確かに漣人は凪のことが大好きで、凪も漣人を可愛がってくれているがそれはあくまで先輩後輩としての関係だ。
それは何年経っても変わりようがない。
でも、律耶は違う。
凪が乗った飛行機を見送ったあの日までは律耶の事は大の苦手で関わりたくない存在だった。
コンクールの日、居酒屋で自分が言った事は全く覚えていないけど、潜在意識の下では孤独な律耶を気にする気持ちはあったらしい。
それが夏休みを一緒に過ごす事で、表向きはマイナスの感情しか持っていなかった自分に確かに変化が芽生えた。
マイナスの感情はたしかにプラスに移行している。
律耶のことは嫌いではなくなった。
だけと、この感情は決して恋ではない。
「急に言われてぶっちゃけ展開に付いていけないというか、恋とか言われても男同士で付き合うとか想像付かないんです」
気のきいたセリフも思い浮かばずに、ただ胸の内を率直に伝えると、律耶の表情が目に見えて暗くなり、慌ててフォローする。
「あ、別に先輩のことは嫌いなわけじゃないんです」
律耶の瞳を真っ直ぐ見据えてそう告げる。
「とりあえずお友達からってことじゃあ駄目ですか?」
「傍に……いてくれるのか?」
「はい。お友達なら」
沈んでいた律耶の表情がパッと輝いた。
「あ、でも条件が!」
ここぞとばかりに条件を出してみる。
「練習をもっと優しくして貰えたらなー、なんて」
「厳しく稽古をつけるのが俺の優しさだ」
ピアノの話を持ち出した瞬間いつもの威厳を取り戻した律耶に後悔するも時既に遅し。
「凪のほうがいいなんて言わないように、俺じゃなきゃ駄目だってその体の奥底に染み込ませてやる」
捉えようによっては超エロい発言であるそれも、ピアノモードに入った律耶にとっては大真面目だ。
「お前にこれから特別レッスンをつけてやる」
いきなり甘い展開というのも困るけど、本気になった律耶の稽古がどれだけ恐ろしいか想像もつかない。
これはとてもマズい。
何とかして止めなければ。
「お前は本番になると緊張するところがあるからな。基礎をみっちりとやって自信を付けた方がいいだろう」
指の練習、初めての音階などと書かれた楽譜が律耶の左腕にどんどん積み重ねられてゆく。
「あ、あのっ」
「何だ」
「ナンデモアリマセン」
完全に通常営業となった律耶が作り付けの本棚から次々に楽譜を取り出すのは、もはや止められないのだと悟った。
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