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ラニアン襲来-4
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雷の夜から何が変わったかと聞かれても、『大の苦手だった先輩』が『時々遊ぶ友達』に昇格した程度だ。
律耶が自主的に振る舞ってくれる料理が、おばあちゃんの味に匹敵する程の絶品でつい律耶邸に居座ってしまうけど、別に疚しい間柄ではないのだから。
男同士が恋人になるというのが、残念ながらまだ受け入れられていない。
だからまだ暫くはこの関係で先伸ばしにする気満々だ。漣人が家を訪れる度にソワソワしている律耶には悪いけどもう少し我慢して貰うしかない。
というわけで、律耶が危惧するようなラニアンの襲撃は杞憂に終わりそうだ。
「じゃ、俺は新館に居ます」
「ああ、気を付けてな」
「はーい」
練習室は西館に入っているので、セントラルタワー(通称新館)の学食に向かう漣人はここでお別れだ。
「あ、そうだ」
今日は休みだけど明日からは漣人も集中講義がある。自分の学部の建物に行って明日の講義室を確認しておきたい。
「近道、近道っと」
漣人たちの校舎に行くには一度、律耶と別れたところまで戻ってセントラルタワーを迂回して行くのが本来の行き方だ。
しかし、このまま直進してセントラルタワーと第1体育館との間にあるフェンスの脇を抜けると半分ぐらいの距離で着くことができる。
これだけ暑いのだから外を歩く時間は1分でも少ない方がいい。それに、近道はセントラルタワーの陰になって昼間でも夕方のような薄暗さに包まれている。
『あまり人気のない所とか彷徨くなよ』
律耶の忠告が頭を過るが、大の男を白昼堂々襲う物好きもいないだろう。
それにラニアンも今の時間は律耶のレッスンを受けているのだから完璧なアリバイ成立だ。
日陰に1歩足を踏み入れると日向とは対極のジメッとした空気が体表を覆う。
ラニアンの襲撃を笑い飛ばしているとはいえ、やはり少し気味が悪いのは否めない。
セントラルタワーが建つ前にテニスコートがあった頃の名残で体育館との間にフェンスがある。
3枚おきぐらいに人が通り抜けるには十分な大きさの穴が開けられているからいざとなったら体育館側へ抜けられる。
少し周りの気配を伺いながらだったけど、あっけなく南棟まで辿り着いた。
(ほらー)
そもそも昼間の学校にそんな危険なんか潜んでいるわけがない。
ラニアンだかポメ田だか知らないけど律耶の気にしすぎだ。
すっかり安心した表情で校舎に足を踏み入れた漣人だったが、本当はこの時気を抜くべきではなかったのだ。
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