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ラニアン襲来-9
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「あ」
階段を上がって掲示板の方に目をやると、そこにはラニアンの姿があった。
「何してるんだ」
集中講義のレジュメが入ったファイルから何か取り出して鞄に仕舞ったのを見た中濱が声を掛けると、ラニアンの肩がビクッと跳ねた。
「何? 何か用?」
中濱を睨み付けるキッとした目が漣人を捉えた途端、驚きと嫌悪感を滲ませる。
「それ、何仕舞ったんだ」
「な、中濱には関係ない」
ガッチリと鞄を握り締める手には力が入っているが、柔道部の中濱はその手を易々と解いて鞄を取り上げた。
「ちょ、ちょっと」
抗議するラニアンを無視して中濱は鞄の一番上に入ったプリントを取り出した。
「何でこれがここにある」
件の、地下に行けという指示が書かれた紙。
中濱の視線が紙面に止まった隙にラニアンは出口へと駆け出した。
「待て」
追いかけて行ったと思ったらすぐにバタン、ドスンと争う音が聞こえてそれもすぐに聞こえなくなった。
「おーい」
中濱の声がする方に行ってみると玄関にラニアンが伸びていた。
(強っ、柔道部)
漣人の視線を受けた中濱は慌てて首を振った。
「違うよ、捕まえようとしたらこいつが足滑らせて勝手に転んだんだ」
「なんだ」
「とりあえず出水んとこ連れてくか」
気を失っているラニアンを背負って歩き出した中濱の隣を歩きながらスマホを取り出して律耶に電話を掛ける。
(出ないなー)
呼び出し音は鳴るものの反応がない。
空を見上げるとさっきまでの青空はどこへやら、グレーの厚い雲が立ち込めている。
「一雨来るかもな」
「ですね」
「急ごう。濡れるのは嫌だからな」
ラニアンを背負ったまま器用に走る中濱を小走りで追いかける。
雨の匂いが鼻に届いたと思ったら、次の瞬間には腕にポツリと雨粒が当たっていた。
東棟の練習室が見えてくる頃には、雨はあっという間に本降りになって遠くの方から雷鳴も聞こえてきた。
「ここに寝かせておくか」
「保健室とか連れてかなくて大丈夫ですか?」
「なに、問題ないさ。ぐっすり眠ってるだけだ」
中濱の背から入り口のベンチに降ろされても、ラニアンは気持ちよさそうに寝息を立てている。
「漣人!」
もう一度電話を掛けて出なかったら、練習室を片っ端から開けてみようとスマホを取り出した時、ずぶ濡れの律耶が飛び込んできた。
「先輩!」
「漣人!! 無事だったんだな」
「はい、中濱先輩のおかげで」
律耶は驚いた表情で中濱とラニアンを交互に見比べた。
「怪我はないか?」
「はい」
「良かった。電話が通じないから心配したんだよ。行くと言っていた学食にも居ないし……何があったか話してくれるか?」
「はい」
中濱の助けも借りて一連の出来事を説明すると、律耶は時折相槌を挟みながら最後まで遮らずに聞いてくれた。
「で、これからどうしようと思ってたところなんですよ」
「わかった。で、中濱。お前にちょっと頼みがある」
「何だ、出水」
「こいつを起こしてくれ。手段は問わん」
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