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えびづくし-2
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「律耶先輩って本当料理上手いですよねー」
「練習したからな」
駅前のスーパーで夕食の食材を買い込み、律耶の家に二人で帰ってきた。
漣人の弾くピアノを聞いてアドバイスをしながらその片手間に作ったとは思えない料理は見た目も完璧だ。
「これ本当に冷凍じゃないんですよね?」
巨大な海老がドーンと鎮座する海老ドリアにスプーンを差し込むと黄色いサフランライスが顔を出す。
漣人イコール海老という図式が律耶の頭の中にあるのか、律耶が用意してくれる料理にはこれでもかというほど海老が入っている。
「失礼なやつだな。ちゃんと材料買ったの見てただろ?」
「だって俺ずっと果物売り場に居たし」
律耶と買い物に行くと、いつも律耶が会計をしてくれる。
ピアノ講師で儲けているといえども毎回毎回では悪いので、漣人はデザートを担当する事になったのだ。
「そうだったな、デザート何にしたんだ?」
「秘密でーす」
「そうか、それは楽しみだな」
スーパーに入ってすぐのところにある果物売り場には、夏真っ盛りなのにイチゴが売られていた。
もちろん旬じゃないからアメリカ産の輸入物だけど、美味しそうだなーと眺めていたら懐かしいものが目に入った。
牛乳を注いで作るプルンプルンなデザートのイチゴ味。漣人が子供の頃におやつで食べたものだ。
これなら作れそうだとカゴに入れたついでに、真っ赤に熟したイチゴも美味しそうなので1パック選んだ。
「先輩みたいに手の込んだものは作れませんよ」
「俺だってまともに料理を作り始めたのなんて最近だぞ」
「え?」
「例の……悩みを相談する相手に聞いてみたら『胃袋を掴め!!』って言うから、食べ物で釣ろうとしたんだよ」
それがあの謎のモーニングセットと豪華寿司かと納得がいった。
昼を挟む稽古で毎回欠かすことなく届いた寿司も、2回目以降は桶からウニが消えて海老が数匹増えていた。
今となってみれば、あの細やかな気遣いも律耶の密かな優しさだったんだなーと嬉しくなる。
(でも……)
律耶に入れ知恵をしている存在が誰なのか気になる。
「律耶先輩がいつも悩みを相談する相手って誰なんですか? この前も言ってましたよね?」
「それはだな……」
何故か言うのを渋る律耶に不信感が沸いてくる。
(言えない相手って誰だ?)
「まさか凪先輩じゃないですよね?」
「凪じゃない。あ、あれだ。お前の知らないやつだ。お前の名前は出してないから安心しろ」
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