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えびづくし-3
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ずっと恐い恐いと忌避してきた律耶の色んな側面を知った。
秘かに優しかったり、雷が苦手だったり。
ラニアン騒動では本当にガツンと言ってくれて男らしい一面も見れた。
次に知った一面は「初心」だった。
高校はおばあちゃんが薦めるままに私立の男子校に通って、大学も女子とは縁遠い理系のキャンパスで漣人は色恋事に耐性がない。
そんな漣人よりも遥かに上を行くのが律耶だ。
漣人が作ったデザートを一口一口大事そうに味わっている律耶を見ていると、何でこの人を今まで恐がっていたのかわからない。
「あ、そうだ」
律耶が帰りの電車の中で「お土産だ」とくれた紙袋を思い出した。
(何だろなー)
30センチぐらいの紙袋を押さえてみると中にはフワフワと軟らかい物が入っている。
「!」
袋から出てきたのはピンク色をした海老のぬいぐるみだった。
(海老は好きだけど……好きだけど……何で海老?)
帰りがけに寄ったスーベニアショップにペンギンやイルカ、アザラシなんかのぬいぐるみが沢山並んでいた。
赤い色をしたカニが居たのも薄っすら記憶にあるけど海老なんて居ただろうか。
「……」
いつの間にか律耶の手が止まっていて漣人の一挙一動を凝視している。
右手にしっかりと握りしめられたデザートスプーンには律耶の体温が移っていそうだ。
「気に……入ったか?」
「はい! 嬉しいです」
まさかのチョイスにはびっくりしたけど、よく見ると笑った目は愛嬌があって可愛らしい。
「なら良かった」
僅かに口角が上がったその表情は、ホッとしたようにも照れたようにも見える。
さっきまで一口一口丁寧に食べていたデザートが怒涛の勢いで口に吸い込まれていくのを見ていると何だか可笑しい。
お土産のやり取りだけでこんな面白い姿を見せてくれるんだ。
無駄な肉など一片も見当たらない精悍な頬を眺めているとソワソワした落ち着かない気分になる。
「何か付いているか?」
漣人があまりにもジロジロ見るので流石に律耶も気付いて、頬のあたりを指先でゴシゴシやっては首を傾げている。
「取れたか?」
「んー、もうちょい左です」
「この辺か?」
何もないところを真剣に撫で回している手を掴んで頬に唇を付けた。
「取れました」
「!」
「い、いい、今何をした」
「何も~」
(本当はわかってるくせに)
真っ赤に染まった耳がそれを証明している。
(こんな初心な大学生、どこにも居ないな)
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