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シマジロウ温泉-4
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川から戻るとテーブルが隅に寄せられ、部屋の真ん中に布団が2組用意されていた。
二人っきりで一夜を過ごすんだという実感が沸いてきて、布団を直視するのが照れくさくなり目を逸らしてしまう。
気まずい空気を払拭しようとテレビを点けると夏に付き物の怪談スペシャルをやっていた。
「あ、本こわやってる。今日だったんだー。先輩も見てますか、本こわ? これ毎年楽しみなんですよねー」
「あ、ああ」
「うわ、夜な夜なホテルに現れる亡霊の通り道だって。うちらも旅行中だから亡霊に会えるかもしれませんねー」
さっき二人で買いに行ったポテトチップスと柿ピーを両方とも開けてスタンバイした。
「そ、そうだな。何かこの宿出そうな気がしてきたな」
律耶はトイレにでも行きたいのか何だかソワソワし出した。
心なしか顔色も悪い気がするがここは触れないのがエチケットだ。
(俺が居るとトイレに行きづらいかな)
『一同絶叫! 驚愕のマル秘映像はCMのあとで』
うまい具合にテレビもちょうどCMになった。
「あー、喉乾いた。先輩、ジュース買ってきますね」
「さっき買っただろ」
「もう飲んじゃいました」
「一緒に行く」
「大丈夫ですよー、じゃ」
本館の廊下でジュースを買って部屋に戻る途中で、シマジロウがご飯を食べているところに出くわした。
「なあシマジロウ。お前、シマシマじゃないのにシマジロウなんだなー」
背中を撫でてやるとちょっとだけ顔を上げたけど、またすぐに食事に集中してしまう。
「本当はね、柴次郎って言うんよ」
おばあちゃんによると、小さい子供がシマジロウと呼ぶのがそのまま定着したんだとか。
「どうやら子供に人気のキャラクターの名前なんだってね」
まあ本人にすれば柴次郎でもシマジロウでも大した違いはないだろう。
「もうそろそろ……」
気付けばもう30分も経っている。さすがに律耶も心配しているかもしれない。
おばあちゃんがエプロンのポケットから出してくれたおせんべいと、少々ぬるくなってしまったジュースを手に立ち上がった。
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