アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
急変
-
アラン様は中庭から戻られるとすぐに自室へ入られた。
「…………アラン様、体調が優れないのでしょうか?」
「いえ、少し考え事をしたいと仰られていました」
先程までアラン様に付き添っていた滝川さんが言う。
「夕食の時間になったら呼ぶようにと」
「はい…!」
最近アラン様のご厚意でなのか、ご主人様の身の回りの仕事が増えた。
最初に出会った……といっても昨日のことだけれど
距離が縮まっている気がして嬉しい。
それにキスをしても「嫌じゃない」と言ってくださった。
してはいけないことだと分かっていた筈なのに、止まることができなかった。
(バレたらクビになりそうだ……)
滝川さんの顔が浮かんで背中に寒気が走った。
「…………仕事仕事……」
今の自分ならご主人様のためにすごく働けそうな気がしてきた。
「……失礼します。アラン様」
ドアをノックして部屋に入ると、アラン様は読書をしていた。
「あっ、タイチ!もう夕食?」
「はい。既に並んでおりますので参りましょう」
「うん!」
立ち上がって歩きだそうとしたその時だった。
「……ゲホッ!ゴホッゴホッ……っ……ゲホッ!」
「アラン様!」
駆け寄ると「大丈夫だ」という風に静止される。
「いつものこと、だよ……気にしないで……ゲホッ…ゴホッ!」
大丈夫なはずがない。
しゃがみこんで、咳が止まらないのに。
それに
「……アラン様……それ……」
「……………あぁ……」
白い手に真っ赤な血。
「……タイチ…………シュウ、呼んで」
「!アラン様!」
アラン様はそのまま力なく倒れてしまった。
「………アラン様!!」
部屋の近くを通ったメイドさんの1人に滝川さんを呼んでもらうとすぐに滝川さんはやってきた。
手慣れているのかすぐにアラン様をベットに運ぶ。
「………貴方がアラン様の隣にいるときで良かったです」
いつも明るく笑うアラン様が嘘のようだ。
顔は真っ青で苦しそうな顔をしている。
「…………アラン様は……何か病気を患ってらっしゃるんですか…………?」
そう尋ねても滝川さんは何も答えない。
「……………聞きたいのであればアラン様が目を覚まされて回復されてから聞いてください」
滝川さんは薬と水を取りに行く為に部屋から出ていった。
「…………アラン様………」
そっと冷たい手を握る。
早く目を覚ましてくださいと願うことしか俺にはできなかった。
それから3時間後、アラン様は目を覚まされた。
「…………タ、イチ……」
「アラン様……!」
良かった。目を覚ましてくれた。
ホッとして泣きそうだ。
「ごめんね………ビックリさせちゃったね……」
「いえ…」
スルリと細い手が俺の髪に触れる。
「…………アラン様………」
「……幸せすぎたのかな……だから罰が当たったのかもしれないね……」
「!」
切なそうに、また苦しそうに微笑むご主人様。
「……アラン様」
「………ん?」
「お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「……………何?」
髪に触れていた手を優しく握る。
「………何か、病気を患っていらっしゃるんではないですか……?」
ゆっくりと大きな目がより1層見開かれた。
「私は…そんなに頼りないですか……?新人でまだ2日も経っていませんが……アラン様のことだけを考えています。ずっと……」
たった2日でもアラン様に頼って頂きたかった。
距離が少しでも縮まっていると思っていたのは俺だけだったのか……?
「…………さしでがましい真似を致しました。滝川さんを呼んで参りますね」
「………待って」
上半身を起こして後ろから抱きつかれていた。
「…………ごめんね………ちゃんと話すべきだった。ごめんね、そんな思いさせて」
「……そんな、謝らないで下さい。何も悪いことなどございません」
そう
悪いのは俺だ。
一方的に知りたいと問い詰めて、ご主人様を困らせて。
「……タイチ、こっち向いて?」
言う通りにすると今度は前から抱きつかれる。
「…………あったかい」
「…アラン、様……」
「………あのね、タイチ。俺、たくさんタイチに隠し事してた」
ご主人はゆっくりと話し始めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 31