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ハネムーン 6 (士郎side)
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これ以上は、まずい。
匂いや空気感にすら煽られているのは、何も龍之介ばかりではない。
香りの類はいっさいつけていないはずなのに、龍之介からはたまらなくいい匂いがした。
以前聞いてみたら、そりゃオマエを前にすりゃフェロモン出まくりだろーが、と嬲るように笑われた。
だが、フェロモンとは受け取る側のレセプターがなければ発動しない。
つまりは生物的にも相性抜群なのだとのたまわれ、嬉しいような悔しいような、ひどく落ち着かない気分にさせられたことを覚えている。
少し落ち着く時間が欲しくて、あえて距離を取ろうとしたが、指を絡められて、封じられてしまう。
「おい……っ」
大の男が二人仲良く手をつなぐなど、正気の沙汰ではないと手を振り払おうとしたが、
「ココはアメリカ領だぜ? ……ンなモン誰も気にしねェよ」
周囲の視線を一身に集めまくる龍之介に、そんな訳があるかと抗議したが、結局はタクシーに乗り込むまでの間、手を離してはもらえなかった。
否、タクシーに乗り込んでからもそのままで、冷や汗が背中を流れ落ちる。
片や龍之介はリラックスした面持ちで、タクシーの運転手と笑い合っている。
触れ合ったままの指で指の股を擦られたり、手の平をグッと親指で指圧されると、気持ちよさが別の何かにつながりそうで、落ち着かないことこの上ない。
「〜〜〜〜〜」
「〜〜〜〜〜〜」
龍之介と運転手の会話に、ピクリと耳が震えた。
聞き間違いでなければ、今ハニムーン……などとありえない単語を口にしなかったか?
「……おい」
「おっ、聞き取れちまったか? ……うちのワイフは美人だろうって、自慢してたトコだ」
「だれがワイフだ……っ」
「ワイフ時々、ハズバン?」
「……っ」
何を白昼堂々、ベッドでの上下を語っているのだと、目眩を覚えた。
「……ったく、濡れた目で煽りやがって」
「……ん…っ!?」
いきなり口付けられて、口内を熱くヌメッた舌で犯された。
ピュ〜と運転手が尻上がりの口笛を吹く。
「……っ!!」
濡れた表情を覆い隠すかのように肩に腕を回され、頬に手を添えられると、世界が龍之介で覆い尽くされていく。
まるで世界中から龍之介以外のすべてが消えてしまったかのようだ。
信じられないほどに満たされて……トロけるように甘いキスに、酔った。
「……はぁ……」
ようやく離れた唇の隙間をぬって、必死に呼吸を繰り返す。
人前で何をしているのだと己を詰ってみても、同じように濡れた目の龍之介を間近に見てしまったら、ダメだった。
「……っ」
欲しくて……欲しくて。
二度目のキスは、自分から求めた。
「……ふ…」
龍之介が吐息だけで笑う。
どうしてこんなに、気持ちいいのだろう……?
キスだけで昇りつめてしまいそうだ。
あやされ、くすぐられ、ときに激しく性感を煽られ、嬲られ……。
時を忘れて酔っていると、不意に運転手から声をかけられた。
龍之介がチッと舌打ちして、絡まったままの舌を解いた。
唇の端から滴り落ちたものを舐め取られ、龍之介が大きなため息をつく。
「……早いトコそのツラ、どーにかしろ」
大きな手の平で覆われた。
「……っ」
必死に深呼吸を繰り返す。
「〜〜〜〜〜〜」
「〜〜〜〜〜〜」
龍之介に支払いを任せてしまったことも気になったが、それどころではなかった。
さんざん嬲られた身体は甘く痺れて、明らかに昂ぶってしまっている。
それでも龍之介が会話で時間を稼いでくれたお陰で、何とか歩ける程度には沈静化させることができた。
最後にハブァスイーハニムーンと陽気な笑顔に見送られ、タクシーは街の雑踏に飲み込まれていった。
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