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運命の契りを
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山の奥深くにそれはあった。
やたらと重々しく造られた見せかけの社。
その前で、あくびなんかかかましながら呑気に突っ立ってる見張りの男を、俺は音もなく気絶させて遠ざけた。
重い鉄製の扉を開ける。
白い衣を頭から被ったそいつはこちらに背を向けて座っていた。
「ご苦労様にございまする。某は逃げも隠れもしませぬ故、どうぞお休みくだされ。」
声が出なかった。ただ涙が一筋こぼれた。
「・・・?如何されましたか・・・」
「・・・。」
「!そ、其方は・・・。某になんの御用でしょうか・・・。」
俺はなにをしにきたんだろう。助け出せるわけでもないのに。
「あ・・・見張りの方は・・・?」
「・・・気絶させた。」
「・・・何故そのようなことをなさるのです。いけないことでございまするぞ。」
「・・・鬼のアンタが言うかねぇ。」
「フフ、それもそうでございますな。」
「・・・ねぇ、こっち向いてよ。」
「いけませぬよ、そんなこと。某は鬼にございます故。」
「アンタ・・・。」
「某を哀れと思いますか?醜いと思いますか?それでよいのですよ、某は鬼、鬼にございます。」
「じゃあ、なんで・・・!」
バッと白い衣をとる。こちらをみて大きく見開かれたその美しい瞳からは
「泣いてんだよ・・・。」
このわずかばかりの人生の中で、見たことのない美しい涙がこぼれていた。
「俺様は、化け物だ。ほら、なにも怖くないさ。」
「・・・ば・・・けものは・・・涙を流すものでございましたか・・・?」
俺は涙を流したままそっと苦笑いしたのだった。
涙を流したひどく寂しがり屋の忌み児が二人、出会ったのである。
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